福島原発 地震で配管亀裂?

福島原発 地震で配管亀裂?
(東京新聞「こちら特報部」12月16日)

 

 東京電力が声高に主張し続ける「津波原因説」に風穴があいた。

 

経済産業省原子力安全・保安院が、福島第一原発1号機の原子炉系配管に地震の揺れで亀裂が入った可能性のあることを認めたのだ。

地震で重要機器が損傷したとなれば、津波対策だけでお茶を濁そうとする原発再稼働計画は破綻する。

なぜ保安院は、今になって全原発が長期間停止しかねないような見方を示したのか。 (佐藤圭)
解析結果 現実と符号
 今月六日、東京・永田町の衆院第一議員会館。民主党の川内博史衆院議員は、保安院の担当者と向き合っていた。いずれも元原発エンジニアで、福島第一原発の設計にも携わったサイエンスライターの田中三彦、沼津工業高等専門学校特任教授の渡辺敦雄の両氏が同席していた。
 保安院から示されたのが「福島第一原発1号機 非常用復水器(IC)作動時の原子炉挙動解析」。最後にこう結論付けていた。
「破損による漏えい等の可能性が議論されているため、漏えいを仮定した感度解析を行った。漏えい面積〇・三平方センチ以下の場合は、原子炉圧力・原子炉水位の解析結果と実機データとに有意な差はない」
難解な表現だが、要するに、地震によって原子炉系の配管に〇・三平方センチの亀裂が入った可能性があるということだ。

〇・三平方センチというと、ごくわずかな印象を受けるが、「ヘアクラック(髪の毛のひび)」という言葉もある原発の世界では非常に大きな穴だ。一時間当たり何トンもの水が噴き出し、炉心溶融につながる冷却材喪失事故の引き金にもなる。

川内氏は「東電は事故原因を津波と決め付けてきたが、地震による重要機器の損傷の可能性を否定できなくなった」と力を込める。
〝物証〟ない 津波原因説
 可能性ではあるが、津波原因説も一つの仮説にすぎない。“物証”がないからだ。原子炉内は今後十年、あるいは二十年は人が立ち入ることはできない。仮にカメラなどで確認できたとしても、断熱材などで覆われた配管の細部までは分からない。「だからこそ、あらゆる可能性を否定してはならない」(川内氏)
話は三月二十五日にさかのぼる。川内氏らが主催する国会議員勉強会の講師に招かれた田中氏が「地震で重要機器が損壊した可能性は高い」と指摘した。

東電は事故当初から「津波原因説」を強く主張し、保安院も同月三十日、非常用電源確保などの津波対策を各電力会社に指示していた。

当時、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員長を務めていた川内氏は原子炉のデータを東電や保安院に要求。ようやく1号機の初期データを持ってきたのは五月になってからだった。
大量水漏れ裏付け 炉心溶融の引き金か
 そこには地震発生後、非常時に原子炉を冷やすICが自動起動。運転員の判断で手動停止するまでの約十分間で、原子炉内の圧力と水位が急降下する様子が示されていた。

川内氏と田中、渡辺両氏、これに元原発エンジニアの後藤政志氏が加わったチームは手動停止の背後に、地震による配管損傷を疑った。田中氏は論文で次のように推論している。

 「おそらく運転員は、ICが作動している時の圧力降下があまりにも速いので、長く激しい地震動でどこかが破断した、そのために圧(あつ)が抜けていると直感したのではないか」
再稼働推進論に打撃
 東電は、運転員の操作は「手順書通り」と言い張った。「ならば見せろ」と川内氏。これが“黒塗り騒動”に発展する。
東電は当初、「知的財産権の保護」を理由に、ほとんどを黒塗りして情報公開を拒んだが、十月末、原子炉等規制法に基づいて受け取った保安院が公開するとともに、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会に提出した。
公開された手順書によると、東電が「手順書通り」としていたのは、定期検査など通常の冷温停止直前の操作。これを事故時の手順にすり替えるような説明をしていた。それでも東電は「手動で停止しなかったとしても事故の拡大は防げなかった」と悪びれなかった。
耐震指針見直しも
 川内氏と専門家チームは十一月に二回、保安院と激論を交わした。あくまでもICの操作を問題視し、配管損傷のシミュレーションを再三、保安院に要求した。
保安院もしぶとい。「三平方センチのケースで解析したが、実測値と乖離(かいり)する」と、いったんは突き放した。〇・三平方センチではどうか。渋々と出してきた解析結果は、実測値の曲線とほぼ合致した。
 専門家チームの一人、渡辺氏は「一部でも東電と違った見解が出てきたことは大きい」と胸を張る。
渡辺氏によれば、事故原因は「地震による配管損傷が最も素直なストーリー」。ポイントは(1)地下水の漏えい(2)水素爆発の原因-の二つだ。
「原子炉建屋内には毎日、大量の地下水が流入している。これは建屋に地震でひびが入ったからだ。地震で原発が大きなダメージを受けたことを証明している」
「爆発には三つの条件がある。まず材料。今回は水素だ。そして酸素、最後に着火源だ。1号機が水素爆発した時、電気は通っていない。最も合理的な説明は、金属摩擦による火花だ。配管が余震でこすれたか、部材が落ちたかだ」
 渡辺氏は事故後、冷却材喪失事故を想定したカラーアニメーションの存在を知った。東電か保安院が作成したとみられる。

地震で配管が損傷し、炉心冷却にすべて失敗。圧力容器を貫通し、格納容器下部に落ちるメルトスルーにまで事故は拡大する。「今回の事故と違うのは水素爆発しないことだけ。東電や保安院はメルトスルーまで想定していた」

「国会事故調 徹底調査を」
 では、なぜ東電や保安院は「津波原因説」に固執するのか。
 地震の揺れは、1号機では耐震設計の基準値内だった。この程度の揺れで配管が損傷したとなれば、「ストレステスト(耐性評価)」はもちろん、現行の「耐震設計審査指針」の全面見直しは必至。

全国の原発では、すべての機器の取り換えが必要になるかもしれない。再稼働をもくろむ保安院、責任回避に躍起の東電は、そう簡単には「地震原因説」に乗れない。

 それでも「地震原因説」は避けて通れない。田中氏は、国会に新設された福島原発事故調査委員会の委員に起用された。川内氏は、調査委を支える両院議院運営委員会合同協議会の幹事だ。
渡辺氏はこう訴える。
 「国会の事故調は、政府とは独立した組織だ。東電や保安院とは離れて徹底的にやってほしい。今回は史上最悪の事故。世界的な責任がある。もしうやむやにされるようであれば、技術者として死んでも死にきれない」
<デスクメモ> 
今回の件でよくわかったのは、東電が発表する“原子炉の状態”とは、計算の結果にすぎず、入力条件を変えてしまえば、どんな結果でも導き出せるという事実だろう。

つまり誰も真実をわかっていないのだ。政府は、これで冷温停止状態を宣言するというのだからあきれる。暴走としか言いようがない。 (充)

福島原発 地震で配管亀裂?
(東京新聞「こちら特報部」12月16日)
 東京電力が声高に主張し続ける「津波原因説」に風穴があいた。
経済産業省原子力安全・保安院が、福島第一原発1号機の原子炉系配管に地震の揺れで亀裂が入った可能性のあることを認めたのだ。

地震で重要機器が損傷したとなれば、津波対策だけでお茶を濁そうとする原発再稼働計画は破綻する。

なぜ保安院は、今になって全原発が長期間停止しかねないような見方を示したのか。 (佐藤圭)
解析結果 現実と符号
 今月六日、東京・永田町の衆院第一議員会館。民主党の川内博史衆院議員は、保安院の担当者と向き合っていた。いずれも元原発エンジニアで、福島第一原発の設計にも携わったサイエンスライターの田中三彦、沼津工業高等専門学校特任教授の渡辺敦雄の両氏が同席していた。
 保安院から示されたのが「福島第一原発1号機 非常用復水器(IC)作動時の原子炉挙動解析」。最後にこう結論付けていた。
「破損による漏えい等の可能性が議論されているため、漏えいを仮定した感度解析を行った。漏えい面積〇・三平方センチ以下の場合は、原子炉圧力・原子炉水位の解析結果と実機データとに有意な差はない」
難解な表現だが、要するに、地震によって原子炉系の配管に〇・三平方センチの亀裂が入った可能性があるということだ。

〇・三平方センチというと、ごくわずかな印象を受けるが、「ヘアクラック(髪の毛のひび)」という言葉もある原発の世界では非常に大きな穴だ。一時間当たり何トンもの水が噴き出し、炉心溶融につながる冷却材喪失事故の引き金にもなる。

川内氏は「東電は事故原因を津波と決め付けてきたが、地震による重要機器の損傷の可能性を否定できなくなった」と力を込める。
〝物証〟ない 津波原因説
 可能性ではあるが、津波原因説も一つの仮説にすぎない。“物証”がないからだ。原子炉内は今後十年、あるいは二十年は人が立ち入ることはできない。仮にカメラなどで確認できたとしても、断熱材などで覆われた配管の細部までは分からない。「だからこそ、あらゆる可能性を否定してはならない」(川内氏)
話は三月二十五日にさかのぼる。川内氏らが主催する国会議員勉強会の講師に招かれた田中氏が「地震で重要機器が損壊した可能性は高い」と指摘した。

東電は事故当初から「津波原因説」を強く主張し、保安院も同月三十日、非常用電源確保などの津波対策を各電力会社に指示していた。

当時、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員長を務めていた川内氏は原子炉のデータを東電や保安院に要求。ようやく1号機の初期データを持ってきたのは五月になってからだった。
大量水漏れ裏付け 炉心溶融の引き金か
 そこには地震発生後、非常時に原子炉を冷やすICが自動起動。運転員の判断で手動停止するまでの約十分間で、原子炉内の圧力と水位が急降下する様子が示されていた。

川内氏と田中、渡辺両氏、これに元原発エンジニアの後藤政志氏が加わったチームは手動停止の背後に、地震による配管損傷を疑った。田中氏は論文で次のように推論している。

 「おそらく運転員は、ICが作動している時の圧力降下があまりにも速いので、長く激しい地震動でどこかが破断した、そのために圧(あつ)が抜けていると直感したのではないか」
再稼働推進論に打撃
 東電は、運転員の操作は「手順書通り」と言い張った。「ならば見せろ」と川内氏。これが“黒塗り騒動”に発展する。
東電は当初、「知的財産権の保護」を理由に、ほとんどを黒塗りして情報公開を拒んだが、十月末、原子炉等規制法に基づいて受け取った保安院が公開するとともに、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会に提出した。
公開された手順書によると、東電が「手順書通り」としていたのは、定期検査など通常の冷温停止直前の操作。これを事故時の手順にすり替えるような説明をしていた。それでも東電は「手動で停止しなかったとしても事故の拡大は防げなかった」と悪びれなかった。
耐震指針見直しも
 川内氏と専門家チームは十一月に二回、保安院と激論を交わした。あくまでもICの操作を問題視し、配管損傷のシミュレーションを再三、保安院に要求した。
保安院もしぶとい。「三平方センチのケースで解析したが、実測値と乖離(かいり)する」と、いったんは突き放した。〇・三平方センチではどうか。渋々と出してきた解析結果は、実測値の曲線とほぼ合致した。
 専門家チームの一人、渡辺氏は「一部でも東電と違った見解が出てきたことは大きい」と胸を張る。
渡辺氏によれば、事故原因は「地震による配管損傷が最も素直なストーリー」。ポイントは(1)地下水の漏えい(2)水素爆発の原因-の二つだ。
「原子炉建屋内には毎日、大量の地下水が流入している。これは建屋に地震でひびが入ったからだ。地震で原発が大きなダメージを受けたことを証明している」
「爆発には三つの条件がある。まず材料。今回は水素だ。そして酸素、最後に着火源だ。1号機が水素爆発した時、電気は通っていない。最も合理的な説明は、金属摩擦による火花だ。配管が余震でこすれたか、部材が落ちたかだ」
 渡辺氏は事故後、冷却材喪失事故を想定したカラーアニメーションの存在を知った。東電か保安院が作成したとみられる。

地震で配管が損傷し、炉心冷却にすべて失敗。圧力容器を貫通し、格納容器下部に落ちるメルトスルーにまで事故は拡大する。「今回の事故と違うのは水素爆発しないことだけ。東電や保安院はメルトスルーまで想定していた」

「国会事故調 徹底調査を」
 では、なぜ東電や保安院は「津波原因説」に固執するのか。
 地震の揺れは、1号機では耐震設計の基準値内だった。この程度の揺れで配管が損傷したとなれば、「ストレステスト(耐性評価)」はもちろん、現行の「耐震設計審査指針」の全面見直しは必至。

全国の原発では、すべての機器の取り換えが必要になるかもしれない。再稼働をもくろむ保安院、責任回避に躍起の東電は、そう簡単には「地震原因説」に乗れない。

 それでも「地震原因説」は避けて通れない。田中氏は、国会に新設された福島原発事故調査委員会の委員に起用された。川内氏は、調査委を支える両院議院運営委員会合同協議会の幹事だ。
渡辺氏はこう訴える。
 「国会の事故調は、政府とは独立した組織だ。東電や保安院とは離れて徹底的にやってほしい。今回は史上最悪の事故。世界的な責任がある。もしうやむやにされるようであれば、技術者として死んでも死にきれない」
<デスクメモ> 
今回の件でよくわかったのは、東電が発表する“原子炉の状態”とは、計算の結果にすぎず、入力条件を変えてしまえば、どんな結果でも導き出せるという事実だろう。

つまり誰も真実をわかっていないのだ。政府は、これで冷温停止状態を宣言するというのだからあきれる。暴走としか言いようがない。 (充)

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