「間接収用」というのは、途方もない拡大解釈である。
ない場合でも、現地国政府の法律や規制のせいで外資系企業の営利活動が制約された場
合、収用と同等の措置とみなして損害賠償を請求するという、途方もない拡大解釈であ
る。
(上、以下・中段よりの引用)
関岡英之著『国家の存亡「平成の開国」が日本を滅ぼす」(PHP新書)を読んだ。
http://puni.at.webry.info/201110/article_20.html
この本では、今話題のTPPについて、いろいろと問題点を指摘しているが、私が興味
を持ったのは、投資の問題だ。
『最も危険なISD(投資家vs国家の紛争解決)条項』という項目で、『「収用と補
償」条項』『「投資家vs国家の紛争解決」条項』について、紹介されていた(80頁
以下)。
… ==
「収用」とは、政府が民間企業を国有化したり、資産を強制的に接収したりすること
を意味する。「補償」とは外資が「収用」でこうむった損失の代償を求めることで、も
ともとは産油国による油田国有化に対抗するために米英によって編み出されたルールで
あった。
(略)
「収用と補償」ルールは、エネルギー資源の海外依存度が特に高い日本にとっても必
要なルールとして支持できるはずであった。
ところが、米国が「間接収用」という新たな概念を持ち出してから、このルールは極
めて危険なものに変質してしまった。
「間接収用」というのは、資産などが接収されたり、物理的な損害をうけたりしてい
ない場合でも、現地国政府の法律や規制のせいで外資系企業の営利活動が制約された場
合、収用と同等の措置とみなして損害賠償を請求するという、途方もない拡大解釈であ
る。
==
日本国内ではまだほとんど一般に知られていないと思うが、海外では、外資に悪影響
を及ぼす政策はおしなべて「収用」と見なされてしまう風潮が蔓延しつつあるという。
米国では金融工学なる学問が編み出されたと聞いたことがあるが、法概念の分野でも開
発力があるようだ。
よく考え付いたよな、「間接収用」なんて。
現地国政府が、国民の利益を守るために規制を導入した場合、それを「収用」と同等の
措置をみなして損害賠償するなんて、考え付いたヤツは、頭がいい。
だが、現地国政府が外資系企業から損害賠償請求されても争えばいいんじゃないの?と
思ったところで、ちゃんと対策を取るような仕組みが用意されているとは。
==
「間接収用」で「損害」を受けた外資が、相手国政府に損害賠償を請求する具体的手
段として用意されたのが、この「投資家vs国家の紛争解決」、通称ISD(Investor
-State Dispute)条項である。
これにより、外資が国家を訴えることができるようになった。
ただし訴える場は、相手国の裁判所ではない。世界銀行傘下のICSID(国際投資
紛争解決センター International Center for Settlement of Investment Disputes)
などの国際仲裁委員会と称する場で、そこでは数名の仲裁人が判定を下す。
審理は一切非公開で、判定は強制力を持つが、不服の場合でも上訴することはできな
いという信じ難いほど無茶苦茶な制度である。
判定の基準は、被告とされた国家の政策の必然性や妥当性ではなく、「外資が損害を
被ったか否か」というただ一点だ。しかもたまたま選ばれた仲裁人の主観に大きく左右
され、類似した判例とは矛盾した判定が下されることもあり、結果は予見不可能だとい
う(略)。
==
正直、すごい仕組みだと思う。
米国は、このISD条項を、NAFTA(米国、カナダ、メキシコの3か国で結ばれた
北米自由貿易協定)で初めて導入したが、それ以外の国との協定等に導入することは失
敗していたようだ。
==
米国はしぶとく、これを二国間EPAに盛り込もうと画策してきた。米豪EPAでは
オーストラリアが断固拒否したため削除されたが、米韓EPAでは韓国はこれを呑んだ
。
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韓国は、ノーと言えなかったようだ。
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日本政府はまだ一度も外資から訴えられた経験は無いが、NAFTAでISD条項を
受諾してしまったカナダは外資によって惨憺たる目に遭わされている。
ガソリン添加物MMT(神経性有毒物質)の使用を禁止したカナダ政府に対して、米
国の燃料メーカーが三億五千万ドルの損害賠償を請求したため、カナダ政府が規制撤廃
に追い込まれた例や、水の大量輸出を禁止したブリティッシュ・コロンビア州政府に対
して、米国のエンジニアリング会社が四億ドルの損害賠償を請求した事例などが報告さ
れている(略)。
==
自由貿易ってこういうことなの?と思ってしまう。
米国国内では、規制がされてたりしてな。
日本では、何か問題が起きると、マスゴミはこぞって国による規制がないことや規制が
甘いことを問題にするし、国民もそういう傾向があると思うが、もし日本がTPPに参
加してISD条項を受諾してしまったら、米国の企業に不利になるような規制はできな
くなる。
規制をするのなら、国が米国の企業にカネを払わなくてはならなくなるが、その原資は
血税だろう。
それにしても、よくいろいろと考え付くよな、米国って。
マスゴミについては、医療と薬品について記載している部分に、こんな記述があった(
213頁)。
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規制というのは空気と同じで、ふだんはそのありがたみがわからない。だが、マスコ
ミが規制の必要性を叫ぶのは、決まって深刻なトラブルや社会問題が表面化したあとだ
。
いったん事が起きると、それまで規制緩和の大合唱を繰り広げてきたことなど忘れた
かのように、掌を返して「役所の怠慢」や「行政の責任」を糾弾する。定見を欠いたマ
スコミこそ無責任極まりない。
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本当にそう思う。
『米国の戦略を学ぶべき日本』という章も、考えさせられた(215頁以下)。
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「紛争解決」は、当事国間で将来、利害対立が発生したときのルールを話し合ってお
くワーキング・グループだ。これはTPPに参加したことをあとで後悔しないよう、よ
くよく詰めておいたほうがいいかもしれない分野である。
「いいかもしれない」というビミョーな表現になったのは、米国は自国に不利な状況
に陥ると、自分が言い出して作った国際ルールを平然と無視する国だからだ。
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そうなんだよな、米国って、そういうところが、あるんだよな。
この後、WTO協定についての米国のワガママぶりが記載されているが、ただ自国の利
益を守るという強い意志を持っている国というのは、国民にとっては良いことなんだろ
う。
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知的専門職については、多くの国で高度な専門教育を修了することや、国家試験に合
格すること、免許を定期的に更新することなど、難しい資格制度や認定基準が設けられ
ている。誰でも簡単に会計士や弁護士などを名のって勝手に商売を始められたら一般の
利用者はたまったものではないから当然の措置である。
こうした資格制度は、本来は貿易のルールなどとはまったく関係がなく、それぞれの
国の国民の利益を守るために、それぞれの国が独自に定めるべきものである。国は、そ
れぞれ固有の社会構造や価値観をもち、それはそれぞれの歴史や伝統文化に根ざしてい
るからである。
しかし米国のグローバル化戦略においてそれは、障害物以外のなにものでもない。米
国は自国の会計士や弁護士が世界中で活動しやすくするために、各国の資格の相互認証
や、資格制度の均質化を主導しようとしてきた。WTO交渉においても交渉上重要な議
題と位置づけていた。
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法科大学院はできたから、あとは司法修習制度を廃止すれば、資格取得の制度は均質化
する。
そういや、韓国も法科大学院制度を作ったんだよな。
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米国は、自国の会計士や弁護士など知的専門職の国際競争力は世界一優れていると勝
手に思い込んでいる。そしてそうした米国の「優秀」な人材やサービスを、海外市場へ
どんどん輸出することを国益として重視している。
さらに、米国の会計士や弁護士の海外進出が増加してゆけば、米国流の価値観やルー
ルも世界に普及させることができると思っており、それは米国流サービスの更なる輸出
機会の拡大につながるという、あくなき波及効果を夢想しているのである。
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米国という国が、ある意味、うらやましいわ。
最後に、TPPに反対する理由として、マスゴミなどでは、国内の農業が壊滅すること
を中心に伝えている。
農業については、TPPにより国内の農業が効率化するかもなと思う反面、でも本当に
壊滅したらシャレにならんなと思う。
特に、主食のお米は、壊滅したら困る。
お米を生産する農家が壊滅した後で、何らかの理由でお米の輸入が断たれたら、日本は
オシマイになるんじゃなかろうか。
輸出してくる国が無くなったときも、同じだと思う。
ある意味、食料は国防。
TPPやるなら、農業を何とかしないとな。
東日本大震災の後、被災地から離れているのに、ウチの近所のスーパーから、お米が消
えた。
ちょうどお米の在庫が無くなったタイミングだった我が家では、お米が買えず困ったの
だが、同時に不安になった。
お米が手に入らなくなるというのは、こういうことかと思った。
このときは、いつもは書籍を買っているアマゾンを使って、お米を買った。
初めてアマゾン使って、お米を買ったわ。
お米の値段は高かった。
だが、おいしいお米だった。
マスゴミは、工業製品輸出と国内農業壊滅のことばかり伝えるが、それでいいのだろう
か。
自分らの仕事だって、影響が出てくるだろうに。