加藤寛元慶応大教授の「私の遺言である」本で「原発即時ゼロ」提言体制派への衝撃

孫崎享氏の視点ー(2013/03/12)
加藤寛元慶応大教授の「私の遺言である」本で「原発即時ゼロ」提言体制派への衝撃

加藤寛氏は、慶應義塾大学教授を務める傍ら、鈴木善幸、中曾根康弘両政権時代には第
2次臨時行政調査会に加わり、土光敏夫会長の下で日本国有鉄道や日本専売公社、日本
電信電話公社の民営化提言を取り纏めたり、1990年からは日本政府の税制調査会会長を
務めるなど、日本の指導体制中の中核に位置してきた人物である。

彼は2013年1月30日(満86歳)でなくなった。

その彼の本が3月21日ビジネス社から出版された。

タイトルは『日本再生 最終勧告 原発ゼロで未来を拓く』。

表紙をまくると次の記載がある。

「本書は私の遺言である。少なくとも「原発即時ゼロ」の端緒を見届けない限り、私は
死んでも死にきれない。」

加藤氏は慶応大卒業生の中に大変な人脈を築いた。

一応、小泉純一郎氏や竹中平蔵氏推薦!と書いてある。

小泉純一郎氏や竹中平蔵氏はこの本を一ページでもめくったのであろうか。そして、「
本書は私の遺言である。少なくとも「原発即時ゼロ」の端緒を見届けない限り、私は死
んでも死にきれない。」という記述を目にしているのであろうか。

この本は原発行政に関する記述はさして多くない。
新しい知識があるわけではない。

この本の価値は、日本の統治機構の中で中核にあったひとが、死ぬ前に、「本書は私の
遺言である。少なくとも「原発即時ゼロ」の端緒を見届けない限り、私は死んでも死に
きれない。」と書いたことにある。

「原発再稼働絶対反対」が死の直前の日本の統治機構の中で
中核にあった人から出てきたことにある。

少なくとも、これまで慶応大学出身者で脱原発に傾いていた人もこれまではなかなか表
向き言えなかった。これからは「私は加藤寛氏を尊敬していますので」と言える。

幾つかの記述を見てみたい。

原子力政策における鉄のトライアングルと投票者の構図

これまで原子力政策における政治プロセスの六プレーヤー、政治家、官僚、企業、一般
投票者、近隣住民投票者の行動の軌跡を見てきた。

自民党を中心とする政治家は経産省を中心とする官僚と結託し、電力会社に参入規制な
ど様々なレントを立法を通じて提供する。その見返りに企業は政治家に政治資金と票を
提供し、官僚には天下りを提供する。原子力政策における鉄のトライアングルが形成さ
れる。

この構図の帰結は鉄のトライアングルの内部者のレントの増大と国民の経済的厚生の現
象である。

甚大な被害をもたらした福島原発事故によって、作為された
「安全神話」が崩壊し、原発問題が原発立地地域に限られた問題でないことが国民に認
識された。

原発が相対的に「低コスト」という作為された「神話」もまた崩壊しつつある。この国
民の認識こそが民主主義の限界を超える第一歩である。

国民が民主主義の政治プロセスの悪しき性向を理解し、鉄のトライアングルとマスコミ
の結託から作為される「神話」が
文字通り神話であることを知り、意思表示をしなければならない。ここに至って初めて
「民間自立」し、国民が自らを利する政治・行政を手にするのである。

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佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科 医師
http://irohira.web.fc2.com/01IroCover.htm
色平哲郎 いろひらてつろう
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