気前のよい春闘 労働者への逆風は変わらない

重複ご容赦。
大手企業が春闘でボーナス満額回答・・・
ほとんどの報道が、アベノミクスよいしょ的な論調に流れる中、愛媛新聞が社説できちっと警告しています。
★ 愛媛新聞  社説  2013年03月15日(金)
気前のよい春闘 労働者への逆風は変わらない
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201303157110.html
 満額回答がずらりと並び、労働者にとって追い風が吹いたかのようにみえる。
2013年春闘は主要企業の集中回答を経て、ひとつの山を越した。自動車で一時金の増額回答が相次ぎ、不振の電機も定期昇給の維持を死守している。デフレ下で15年も名目の賃金が下がり続けただけに、流れを変える糸口になりうるのかもしれない。
期待先行は否めないが、財界の意にかなう政策転換の流れで円安と株高はもたらされた。首相の賃上げ要請に経営側が応えるのは筋だろう。
ただ、輸出産業の業績を大幅回復させる為替効果は一度きりのものだ。行き過ぎた円安は材料価格を押し上げ、内需産業が中心の地方を圧迫しかねない。ましてや、経営側の「気前のよさ」がいつまでも続く保証はない。
デフレを脱し、消費と投資の好循環をつくるには、月給を底上げするベースアップが不可欠だ。その意味では今年の「ベアなし春闘」も迫力不足と言わざるを得ない。
正社員中心で目先の賃金水準にこだわるあまり、非正規労働者の待遇改善はまたしても置き去りだ。持続して業績を上げ、いかに所得上昇と格差是正につなげていくかの根本的な議論を、経営側も労働側も放棄してはなるまい。
今春闘では雇用拡大の中軸を担う流通業界の経営陣が真っ先にベア実施を表明した。賃上げ相場の先導役が古参の製造業から置き換わった点は注目だが、サービス産業にこそ非正規の低賃金労働が多い実態は捨ておけない。コンビニ各社が決めた賃上げは、多くが正社員のみが対象だ。
労働者への逆風は変わらない。政府の産業競争力会議では、雇用規制緩和の議論が始まり、新しい解雇ルールが検討課題に上る。政府の意を酌んだ賃上げをあえて強調するコンビニ大手の社長は、その旗振り役の一人でもある。
経営側の気前のよさは、政府のデフレ対策に「恩返しした」というよりも、むしろ都合のよい規制緩和をあてこんで政府に「恩を売った」とみるべきだろう。公共の福祉や人権と深くかかわる労働分野の規制を、経済原理だけで論じる過ちが繰り返される恐れは依然として残る。
全労働者の7割は中小企業で働く。「気前のよい春闘」も、これから労使交渉が本格化する地方に恩恵が及ばなければ本物とはいえない。
ここ5年、県内企業の賃金情勢は厳しい底ばい状態が続く。明るい材料を探すのが難しい中では、経営側も英断はできまい。賃上げの動きを一過性で終わらせない、中小企業の成長と格差是正がしっかりと結びつく政策の保証が必要だ。それを現に示さない限り、脱デフレにかける安倍政権の本気度は疑われよう。

 


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近藤 ゆり子  k-yuriko@octn.jp
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