(社説)原発関連死 福島の痛みを直視せよ

朝日新聞デジタル

2014年3月8日05時00分

 「事故によって死亡者が出ている状況ではない」。福島での原発の事故について、自民党高市早苗政調会長が昨年、こんな発言をした。

だが、命にかかわるのは放射線だけではない。避難生活で体調を崩して亡くなったり、自殺に追い込まれたりする「震災関連死」が増え続けている。

長期避難が続く福島では今年1月末までの関連死が1660人で、地震や津波による「直接死」の1607人を上回った。東日本大震災の被災3県全体の関連死のうち、6割近くを福島が占める。

福島では今なお、毎月30人ほどが新たに関連死と認定されている。「原発事故関連死」とも呼ばれ、避難生活が長期化する原発事故の深刻さを浮き彫りにしている。

復興庁は関連死をめぐる課題と対策を12年夏にまとめたが、減る傾向のみえない福島については昨春に改めて実情や問題点などを調査した。

被災から1年以上たってから関連死した35人を対象にしたその調査によると、ほとんどの人が、移動や避難生活による疲労やストレス、医療事情の悪化で徐々に衰弱した。避難区域の相次ぐ変更などで平均して7回も移動を強いられていた。

岩手や宮城の被災地と大きく異なるのは、放射能で住み慣れた地域を追われ、「生きているうちに今の避難先から出られないかもしれない」という不安だ。復興庁の報告で専門家はそう指摘している。

調査した福祉施設での12年2月までの3カ月の死亡率は、前年同期の1・2倍に増えた。報告では、全体に健康へのリスクが高まったと考えるべきで、認定された関連死は「氷山の一角」としている。

福島の避難者は13万人を超える。関連死を防ぐには生活の立て直しが最大の課題だが、帰還の前提となる除染は長引き、生活再建への道のりは長い。

被災自治体では保健師や生活支援相談員らに仮設住宅などを巡回させている。心身両面の健康を保っていくため、今できることを尽くしてほしい。

安倍政権は原発の再稼働に積極的だ。だが、再稼働の前に、万一に備えて避難計画を整える必要がある。放射能被害から逃れるために、いち早く避難する計画も大切だが、ただ避難するだけでなく、どのように関連死を防ぐかも重要課題である。

原発事故で痛めつけられ、関連死のリスクとも向き合わなければならない。その不条理を、政治は直視すべきだ。

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