(集団的自衛権 読み解く)憲法解釈編:5 解釈変更、国家のあり方問う

朝日新聞デジタル

2014年3月9日05時00分

 集団的自衛権の行使容認を目指す首相・安倍晋三に、足元の自民党から批判が噴き出した。

2月13日の自民党総務会。安倍は前日の衆院予算委員会で、行使容認を憲法解釈の変更で目指す考えを強調したうえで「最高の責任者は私だ」と発言した。長年にわたる憲法解釈の積み重ねを、時の政権の判断で変えられる。そう受け取られかねない発言だった。

「昨日の総理答弁はおかしい。あれが許されれば、選挙で勝った政権が、その都度、憲法を好きなように拡大解釈できる」。元行革担当相の村上誠一郎が口火を切ると、党憲法改正推進本部長を務める船田元が続いた。「解釈変更と憲法改正は、表裏一体。解釈変更でどこまでできるのか、整理が必要だ」

自民党は野党時代の2012年4月に公表した憲法改正草案で、個別的と集団的の両方を含む「自衛権の発動」という文言を盛り込んだ=表参照。同年7月には、憲法改正の前に、解釈変更を前提とした集団的自衛権の行使を認める国家安全保障基本法もまとめた。党内の正式な手続きで解釈変更による行使容認の判断をしているわけだ。

それでも異論が出るのは、実際に政権を取り、政策を実行する立場となったからだ。国の最高法規である憲法を解釈で変えることは、日本の安全保障の問題を超えて、国のあり方を問う問題だ。自民党でリベラルな立場を取る議員らを中心に懸念の声が強まり始めている理由は、そこにある。リベラル派の代表格で法相の谷垣禎一は今月7日、「憲法解釈があまりに不安定だと国家のあり方そのものも動揺してしまう」と、閣僚でありながら解釈変更に慎重姿勢を示した。

実は党内リベラル派だけでなく、保守派の一部にも憲法解釈の変更には別な意味で懸念がある。「解釈変更を先行してやるが、憲法改正をしなくていい、という話に持っていかれるのはよくない」。安倍側近で自民党総裁特別補佐を務める萩生田光一は朝日新聞の取材に、こう述べた。萩生田は解釈変更に賛成するものの、それをやれば憲法改正は必要ない、という空気が広がることを心配している。

 

■与野党に波紋、攻防幕開け

一方、安倍が投げかけた解釈変更の波紋は政界全体に広がっている。

民主党が4日、決定した「憲法解釈の変更に関する見解」。解釈変更について「余地は否定しない」とする一方で、「内閣が便宜的、意図的に変更することは、立憲主義に反し許されない」とした。

基本方針には、苦しい党内事情が色濃く影響していた。党内でも保守派は憲法解釈の変更による行使容認に理解を示すが、リベラル派は反対だからだ。

みんなの党代表・渡辺喜美は「かつて憲法解釈を国会答弁で変えたこともある」と安倍の姿勢を支持する。自民党が連立を組む公明党は行使容認に慎重だが、みんなや日本維新の会は賛成でまとまっている。

安倍は、みんなや維新を念頭に1月の施政方針演説で「政策の実現を目指す『責任野党』とは、柔軟かつ真摯(しんし)に政策協議を行う」と述べた。これに公明党は「理解できない」と不快感を示す。

通常国会で来年度予算案が衆院を通過した。予算成立にメドが立ち、中央政界の視線は集団的自衛権をめぐる攻防に移りつつある。

安倍がいつ、どんな形で解釈変更を示すのか。それに与野党はどう動くのか。米国をはじめとする関係国の反応はどうか。その議論の行方は、日本の国家としてのあり方を変え、国際社会における日本の立場に影響を与える可能性をはらむ。=敬称略

(蔵前勝久、広島敦史)

「集団的自衛権 読み解く 憲法解釈編」は今回で終わります。このシリーズは随時、掲載していきます。

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