(風 ワシントンから)日米の財政再建 「強制削減」は邪道だけれど 山脇岳志

2014年3月24日05時00分

 来月から、日本の消費税が5%から8%に上がる。

日本政府は、1千兆円を超す借金を抱えている。この増税をきっかけに、財政再建に踏み出せるのかどうか。世界が注目している。

去年の夏、安倍政権は迷っているようにみえた。

ワシントンの米政府シンクタンクの知人たちは、気をもんでいた。日本経済に詳しいピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長も「増税しなければ、日本への信頼が大きく揺らぐ」と真剣に心配していた。

今の海外の関心は、景気が持ちこたえて、予定通り来年秋から10%に上げられるかどうかだ。政府は、年末までに判断する。ウォールストリートの大手銀行エコノミストは「10%に上げられなければ、日本は財政を再建できないという見方が広まる。海外投資家は日本株を売るだろう」と予想する。

財政再建は増税だけでは進まない。歳出、つまり支出を切り詰める必要がある。

安倍政権には、真剣に財政を再建しようという意思が感じられない。補正予算や新年度予算をみると、選挙で自民党を支援してくれた関係各所に大盤振る舞いをしている」と批判するのは、世界各国の財政に詳しい明治大学大学院教授の田中秀明氏である。「本来は政治がメリハリをつけて歳出削減すべきだが、それができないのなら、『強制削減』もやむを得ないかもしれない」

強制削減――米国が導入した、自動的・強制的に歳出をカットする仕組みだ。

現財務長官のジェイコブ・ルー氏らが考え出した。

ハリー・ポッターのような丸ぶちメガネをかけるルー氏は、格差の拡大に批判的で、貧困削減を訴えるリベラルな思想の持ち主。一方、時には妥協をいとわないプラグマティストとも言われる。

2011年夏、ルー氏は、米政府で予算を担当する行政管理予算局長だった。

当時の米議会では、米国政府の借金の総額(債務上限)の引き上げや財政赤字削減の方策をめぐり、与野党の対立が激化していた。米国の国債がデフォルト(債務不履行)を起こし、世界経済が大混乱になるおそれもあった。

局面打開のため、ルー氏らは一計を案じる。歳出削減額を折半し、半分を国防費から、残り半分をそれ以外からとし、強制的に減らしていく案だ。共和党は軍事費、民主党は福祉や教育費の削減に反対するため、こんな案が実現するはずがない。その結果、両党はよりましな赤字削減策をまとめるだろう、と。

しかしながら、両党の妥協は成らず、昨年3月から、10年間で、1・2兆ドル(約120兆円)の強制削減が始まった。その後、一部の歳出について削減ペースは緩和されたものの、強制削減は今なお、続いている。

米国民からは不評である。昨夏のギャラップ社の調査で、強制削減を「良い」と答えた人は15%にすぎない。

「決められない政治」の末の強制削減は、邪道には違いない。ただ、米国の財政赤字はこの政策のおかげもあって、少しずつ減っている。日本の財政状態は米国よりも悪い上、少子高齢化が急速に進むため、ますます厳しい状況が待ち受けている。

強制削減は痛みを伴う。ただ、一つの国の財政が破綻(はたん)したときの悲劇はその比ではない。(アメリカ総局長)

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