原発が止まったままでも地元にカネが落ちる仕組みができあがっていた。立地自治体の都合で核燃料税の仕組みが変更されたためだ。税の原資の大半は国民が支払う電気料金で、東京電力福島第一原発事故を経てもなお、立地自治体の原発マネー依存は続く。▼1面参照

 

福井県敦賀市の「ふるさと夢市場」。市郊外の田園地帯の一角に建てられた平屋建てに、地場産の野菜やコメがずらりと並ぶ。地域の人が農産物を持ち寄る直売所だ。駐車場も広い。

2010年にオープン。運営主体は地域の農家でつくるグループ「敦賀市農産物直売の会」だ。自身も農家の小島学店長は「県外からも買いに来てくれる。こういう場所ができて、ここの農業を知ってもらえた」と顔をほころばす。

夢市場は、県が敦賀市に出した約8千万円の「核燃料税交付金」でできた。核燃料税収入の一部だ。

福井県が全国で初めて核燃料税を始めたのは1976年。「原発の安全対策に財源が必要」というのが理由で、12年度までに累積で1655億円を得た。福島事故後、原発が止まっていても税が入る「出力割」を導入したのも福井県が最初だ。

県は税収の一部を、原発を抱える自治体や周辺の市町村に交付金として出してきた。交付金の使途はもともと「原発が所在することにより必要な事業」と限定されていた。

例えば、日本原子力発電敦賀原発や高速増殖原型炉「もんじゅ」がある敦賀市。原発があるため、ほかの自治体よりも職員が多く必要になるとして、交付金を原発担当職員や消防の人件費に充ててきた。

しかし、原発と関係の薄い事業にも交付金が使われる実態が生まれている。

夢市場もその一つ。原発が林立する県南部では07年度から「地域に共通する課題を解決するために必要な事業」に新たに交付金を使えるようになったためだ。

公園のトイレ整備、駆除したシカを入れる冷蔵庫、市立大学の整備、観光地の木道の改修……。敦賀市の担当者は「ハコモノのような分かりやすい事業が多くなる」と明かした。

 

■「寄付と違う」 県の理屈

昨年10月末、青森県庁。青森県の市長会と町村会の立場で顔をそろえた首長たちが、三村申吾知事に地域振興を迫った。

電気事業連合会(電事連)等に寄付を要請することは大変難しい。支援を」

青森では電事連と日本原燃の寄付金が長年、全40市町村に行き渡ってきた。しかし、福島事故を機に高まった寄付への批判を受け、電事連や原燃が寄付の取りやめを表明。原発マネーに依存してきた自治体の財政が危機に陥り、県に支援を求めたのだった。

長く寄付金の橋渡し役を担ったのが、「むつ小川原地域・産業振興財団」。電事連が50億円を寄付、銀行融資の50億円を加えて1989年に設立された。電事連はこれとは別に財団に20年間で約130億円を寄付し、原燃は銀行融資の利子分約2億円を毎年負担。総額約230億円が電力業界からむつ財団に入った。

産業振興や地域活性化のためとして、財団から全市町村に助成がなされた。財団設立以来13年度までの総額は198億円にのぼる。下水道改修、地区の祭り、ナマコの種苗の生産、子ども向けクラシックコンサート……。助成先は幅広い。福島事故後の寄付の中止は「地域振興策のストップ」を意味した。

首長の申し入れから1カ月後の昨年11月、県はウラン製品などにかける税率を2・3倍に上げる核燃料税の条例案を県議会に出す。増額は1年あたり37億円分。納める中心は原燃だ。今年2月、県はむつ財団に14年度から5年で24億5千万円を補助し、ほかに50億円を貸す新事業を始めると発表した。

これにより、むつ財団が市町村への支援をこれまでとほぼ同規模で続けることが可能になった。

諏訪益一県議(共産)は「寄付も核燃料税も元は電気料金で国民の負担だ。寄付をやめるふりをして核燃料税を充てたとみて差し支えない」と話し、県議会でも原発マネー依存を指摘した。

だが、県の担当者は「核燃料税一般財源に入る。寄付と同じという見方は当たらない」と言う。(大谷聡)

 

■悪循環抜け出せ

清水修二・福島大教授(地方財政学)の話 福島事故により、電源三法交付金など原発を巡る仕組みは知られるようになってきた。だが、核燃料税を巡るからくりで、電気料金の使われ方に問題があることを市民はもっと認識すべきだ。福島事故後にもかかわらず、原発立地地域が原発への依存を続けていることの現れで、悪循環から抜け出さなければならない。