2014年4月3日05時00分
アジアでは日本に次ぐ23基の商業用原子炉を抱える韓国が、「原発のごみ」の処分に苦慮している。中・低レベルの放射性廃棄物を保管する施設は6月にも完成するが、たちまち容量不足に陥りそうなうえ、拡張工事の見通しも立たない。使用済み核燃料の行き場については、議論が始まったばかりだ。
古代新羅の都で日本海に面する慶州(キョンジュ)市。7世紀に三国統一を成し遂げた文武王が眠る海中墓近くの丘陵地に、地下トンネルがあった。韓国原子力環境公団が運営する「中・低レベル放射性廃棄物処分施設」への入り口だ。
急なトンネルを車で下ると、地下130メートルの場所にぽっかりと空間が広がっていた。高さ50メートル、直径27・3メートルの円筒形サイロ。厚さ1・2~1・6メートルのコンクリート壁で覆われた六つのサイロがトンネルでつながっている。完成予定は6月。原発作業員が使った防護服や手袋などを詰めたドラム缶10万本を、ここに300年間は保管する。
韓国初の商業炉・古里(コリ)原発1号機(釜山市)が稼働したのは1978年。放射性廃棄物の処分施設の選定は86年から本格化したが、候補地が浮上するたびに地元の強い反対に遭った。
韓国政府は2005年、3千億ウォン(約300億円)の特別支援金や公営企業・韓国水力原子力の本社移転という「あめ」を用意し、「地元の支持が最も高い所に建設する」と表明。過疎に悩む4自治体が名乗りをあげ、住民投票で「89・5%」が賛成した慶州市への建設が決まった。
08年に着工。花崗岩(かこうがん)盤をくりぬいた「アジア初の地下トンネル型の放射性廃棄物処分施設」(同公団)とされる。用地買収費や地元対策費も含め、これまでに計約1・5兆ウォン(1500億円)が投入された。
ところが、韓国にある4カ所の原発には、すでに計9万1千本超のドラム缶が一時保管されている。処分施設の容量はドラム缶10万本分。これでは開業早々、ほとんどが埋まってしまうことになる。
同公団は収容能力を約80万本まで拡大する方針だが、計画策定はこれから。工事着工のめどすらたっていないのが現状だ。
加えて、地元の環境保護団体は拡張工事に反発を強めている。処分施設から海までは最短で約300メートル。金益重(キムイクチュン)・東国大教授は「施設周辺の地盤は地下水が多く、海も近い。300年のうちに放射性物質が漏れ出すおそれがあり、危険な施設だ」と指摘する。
■朴政権、進む原発依存
「漢江の奇跡」と呼ばれる1980年代の高度経済成長を成し遂げた韓国。日本と同様エネルギー資源は乏しく、原発に依存してきた。
朴槿恵(パククネ)政権は昨年末、新たなエネルギー基本計画をまとめた。エネルギー源に占める原子力発電の割合を、現行の26%から2035年には29%に引きあげる方針を決定。原発を約40基まで増やす増設路線の維持を明確にした。
ただ、高レベル廃棄物である使用済み核燃料の行き場は白紙のままだ。使用済み核燃料は、国内4カ所の各原発で一時保管されているが、16年には古里原発が「飽和状態」になる見込み。
韓国政府は、使用済み核燃料の処分方法を早急に決める必要があるとして、昨年10月、専門家による委員会を立ち上げた。貯蔵方法や用地の選定方法などの議論を始めたが、福島第一原発事故を機に韓国でも原発関連施設への不安は高まっており、具体化までには難航が予想される。
韓国政府は「使用済み核燃料の活用」を掲げて再処理することも検討している。だが、原子力協定を結ぶ米国が朝鮮半島の非核化への影響を懸念して難色を表明。韓国の再処理を禁じる現協定は3月18日から2年間延長され、実現は困難な見通しだ。(慶州=中野晃)
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