集団的自衛権の“限定容認”は詭弁だ

田中秀征 政権ウォッチ
【第228回】 2014年4月10日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

常識的判断を逸脱した
安倍首相の“憲法解釈”

安倍晋三首相は「解釈改憲による集団的自衛権の行使」に向かってアクセルをいっぱいに踏んだように見える。

それはおそらく自民党を行使容認でまとめる目途がついたからであろう。

実際、高村正彦副総裁が“限定容認論”なる詭弁を持ち出してから、奇妙にも党内慎重派の勢いは一気にしぼんでしまった。

それでは、これに公明党も渡りに船とばかり同調するのだろうか。

3日の自民党幹部との協議で公明党の山口那津男代表は、集団的自衛権行使の事例としている事態は「個別的自衛権などで対応できる」と強く反論したと言う。その通りである。

自民党はその与党協議の場で、「限定容認論」について、「日本の安全保障に直結する必要最小限の事態だけに集団的自衛権を行使すること」と説明している。だがその事例の大半が個別的自衛権の範囲内で対応できるのだから、公明党の主張を受け入れればよいはずである。

なぜ安倍政権は「集団的自衛権」に固執するのか。それは、この際集団的自衛権の全面的行使への突破口を開くことが一義的な目的だからだ。

最近になって自民党は、解釈改憲の理論的根拠として昭和34年の「砂川判決」を持ち出している。しかし、当時の時代背景を考えれば、最高裁が「集団的自衛権を含めた」自衛権を認めたという解釈は到底成り立たない。これこそ窮余の一策だ。常識的判断を逸脱した憲法解釈は厳に慎むべきである。

このまま“国際公約”になりかねない
日米首脳会談を見据えた思惑も

さて、安倍首相が焦るのは、米国との約束による。すなわち、今年末に「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の再改定を米側に要請、そこに集団的自衛権行使の具体的事例を明記するつもりだからだ。安倍首相は4日の国会答弁でも、ガイドラインに新しい協力も入れる意向を述べている。この発言は1つの伏線である。

要するに、①“限定容認”で与党合意、②今国会中の閣議決定、③秋の臨時国会で関連法改正、そして④年末までにガイドラインの再改定。そういうスケジュールだ。

4日23、24日にオバマ米大統領が国賓として訪日することになった。そのときの日米首脳会談はきわめて重要な意味を持っている。

この会談で安倍首相が「集団的自衛権行使のための解釈改憲は、自民、公明の与党合意が成立し、いつでも閣議決定可能な状態にある。これを新しいガイドラインに明記する」と発言するつもりだろう。

この発言は、その後の国会や内閣を縛る“国際公約”ともなりかねない。少なくとも外務省はそれを狙っているはずだ。

先月末の毎日新聞調査では、集団的自衛権の行使に賛成37%に対して反対は57%。それを憲法解釈の変更によって実現しようとする安倍首相には賛成がわずか30%で、反対は64%に達している。内閣支持層でも解釈改憲反対は53%。公明支持層は7割が反対している。しかもこの世論は日増しに強まっている。

ところで、公明党が明確な主張を展開しているにもかかわらず、野党第一党の民主党はどうしたのか。「党内の意見が割れている」ことは外に向かって何の説明にもならない。こんな重大な問題に沈黙しているなら、政党も政治家も失格ではないか。ことは運命的選択に直面しているのだ。

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