規制緩和論者と厚労省が「10年戦争」を

規制緩和、混合診療で火花
「医師と患者合意なら」改革会議
「患者に不利益」厚労省
朝日新聞 2014年4月11日

公的な医療保険が使える診療と、使えない自由診療を組み合わせる「混合診療」が、
政権が6月にまとめる規制改革の焦点となっている。政府の規制改革会議は「医師と患
者の合意」を条件に大幅拡大を主張。厚生労働省など関係者の多くが反対するものの、
会議側は引かない構えだ。

このテーマを巡っては、規制緩和論者と厚労省が「10年戦争」を続けてきた。今月
上旬も、規制改革会議の岡素之議長(住友商事相談役)らと厚労省幹部が非公式に意見
を交わしたが、溝は埋まらなかった。

「必要な医療は保険の対象とするのが『国民皆保険』の原則。安全性・有効性がない
医療には保険からお金を出せない」との理由で、混合診療は原則禁止とされてきた。だ
が難病患者の負担を軽くするため、2006年以降、例外的に認める範囲を広げてきた
。今は約100の先進医療などが対象になっている。

規制改革会議は6月の答申に向け、この分野に再びねらいを定める。3月には、患者
と医師が合意すれば、混合診療を幅広く認める新制度「選択療養」を提案した。岡議長
は「難病と闘う患者が望む治療を受けられるよう、選択肢を広げたい」と訴える。

選択療養はがん治療などを想定するが、病名や治療法をあらかじめ限定しない。この
点が従来の仕組みとの大きな違いだ。治療計画を文書で患者に説明して承諾を得る、と
いった手続きを医師に義務づけ、安全性や必要性が低い治療を排除するとしているが、
「混合診療の実質的解禁」との受け止めが広がる。

この提案に対し厚労省は、安全性と有効性を確保できず患者や保険財政に不利益を及
ぼす▽高度な治療法について患者は医師と対等な立場で判断できない、といった懸念を
示す。

日本医師会は「国民皆保険を揺るがしかねない」と反対を表明。医療費を払う側の健
康保険組合連合会なども「保険の責任の範囲を超える」と批判する。

患者団体の支持も広がっていない。約30万人の会員を抱える日本難病・疾病団体協
議会は「安全性の確認がない自由診療は健康被害を拡大しかねない。必要な医療は保険
で受けられる原則を堅持すべきだ」として反対している。

規制改革会議は孤立無援にみえるが、厚労省は「規制改革は首相の肝いり。ゼロ回答
は許されない」(幹部)として、妥協案づくりを急ぐ。主要閣僚の一人は「制度を大き
く変えるのは難しい」とみるが、会議のメンバーは「まとめるのは6月。この問題はギ
リギリまでかかる」と強気だ。(石松恒、高橋健次郎)

◆キーワード

<混合診療> 3~1割の自己負担で受けられる保険診療と、全額自己負担の自由診
療を併用すること。原則禁止で、一部でも自由診療を使うと、本来保険が使える部分も
含め全額患者負担となる。例外として、将来の保険適用を前提に、安全性や有効性を国
が確認した先進医療などについて混合診療を認める「保険外併用療養費制度」がある。

Categories 医療

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