大学教員 齋藤荘之助(神奈川県 83)

集団的自衛権の憲法解釈に関して、「砂川事件」の最高裁の判例が集団的自衛権の行使を認めているものだ、という論理を自民党幹部が持ち出した。だが、判例のこうした解釈には無理があり、与党内でも見解が分かれている。

裁判は、米軍のわが国への駐留が「戦力」の保持を禁止した憲法9条に違反するとして提訴された。東京地裁は、米軍駐留は憲法9条違反との判決を出した。最高裁はこれを破棄。9条にいう戦力を「わが国が主体となって指揮権、管理権を行使し得る戦力」と定義し、在日米軍は日本にいるとしても戦力には該当せず、違憲ではない、という判断を下した。

砂川事件裁判で問われたのはあくまで「戦力」の解釈である。一方、いま問われているのは、集団的自衛権憲法9条で「放棄」された「武力の行使」に該当するのかどうかだ。

従って、自民党が砂川判決を根拠に集団的自衛権の行使を容認し、日本への攻撃がないのに自衛隊が米軍などを武力で助けることも許されるとするのは、あまりにも短絡的である。判決は集団的自衛権に直接は言及しておらず、判決を根拠にその行使が憲法上許されるとするのは妥当ではない。

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コメント:最高裁砂川判決は在日米軍は「日本の」戦力ではないというに過ぎない。駐留軍が集団的自衛を「是認」したものではなく、まして日本が今まで否定してきた「集団的自衛」を是認し、更に「自主的に参戦する」ことを認めるものではない。「参戦」(交戦権)は憲法違反である。