【TPPの真実】

24日の日米首脳会談。主要テーマのひとつがTPPの関税協議だ。安倍首相は交渉が最終段階にあるとの認識を示していたが、そうは問屋が卸さない。日本のメディアはまったく報じないが、日本側が「関税ゼロ」をのまない限り、TPPの日米交渉は決裂必至の情勢になっているのだ。
TPP交渉をめぐり日本のメディアは、重要農産物5項目のうち牛・豚肉以外の「米・麦・砂糖は関税撤廃が避けられる見通し」だと報じてきた。しかし、それは絵に描いた餅だ。仮にオバマ大統領が“妥協”したところで、米国議会が「関税維持」に納得することはない。
■訪日前に書簡でクギ
それを裏付けるかのように、オバマ大統領訪日のタイミングに合わせ、先週末、米下院の超党派議員63人が、フロマン米通商代表とビルサック米農務長官に宛てて次のような書簡を送っている。
<もし、日本の例外が認められるならば、他のTPP諸国は同様の扱いを求め、合意全体が解体してしまう危険性をもたらすことになる>
つまり、日本が重要農産品の関税撤廃に応じるまで、TPP交渉を妥結してはならないと釘を刺しているわけだ。
■韓国との“前例”
書簡を入手したTPP反対派の山田正彦・元農相がこう言う。
「(オバマと安倍の交渉は米国議会に認められず)韓国と同じパターンになる可能性が高い。米国の市民団体『パブリックシチズン』のローリー・ワラック氏によれば、米国と韓国は2007年のFTA締結時、いったんは署名しました。ところが、その時に署名した内容の関税では米国議会を通せなかった。それでオバマ大統領は12年に、<(米国議会で批准できるように関税を)変えて欲しい>と言って韓国に要求をのませたのです。それもこれも、オバマ大統領が米国議会に信用されていないからです。オークランド大のジェーン・ケルシー教授は、大統領に権限を与える『TPA法案』が米国議会で通らないのは明らかだと言っています。与党議員のうちTPA法案に賛成しているのは7人だけなのです。日本のマスコミが報じている“落としどころ”は、実現性が全く担保されていません」
米国議会が立ちはだかっている以上、TPPで日本は重要5項目全ての「関税ゼロ」から逃れられないのだ。
(取材協力=ジャーナリスト・横田一)