モノやサービスのやりとりが自由な経済圏をつくる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、日米両政府は25日、「重要課題で前進する道筋を特定した」との共同声明を発表した。両国は「大筋合意」はできなかったとの認識では一致したが、交渉の進み具合の評価にはズレがあった。対立点はまだ多く、早期の妥結は見通せない状況だ。▼2面=成果に濃淡、4面=共同声明要旨など

 

共同声明では、TPPについて「包括的な協定を達成するために必要な大胆な措置をとる」としたが、妥結に向けて「まだなされるべき作業が残る」とも明記した。協議で一定の進展はあったものの、対立点があることを認める内容だ。

甘利明TPP相は25日の会見で、声明内容について「大筋合意も実質合意もない。ただ、収斂(しゅうれん)に向かって前進はした」と語った。声明の「前進する道筋」については「農産物と自動車でこういう道をたどると妥結が見えてくるということだ」と説明した。米国側は「ブレークスルー(飛躍的進展)があった」(政府高官)と、日本より前向きに評価している。

日本は交渉に参加するにあたり、国会が重要農産物の関税を守ると決議。安倍政権としても国会や支持基盤である農業団体の意向は無視できない。オバマ政権は今年11月に中間選挙を控え、TPPが国内の雇用拡大につながることを有権者に示す必要がある。米国が声明を前向きに評価するのは、そうした「成果」を国内向けに強調したいという思惑があると見られる。

甘利氏と米通商代表部(USTR)のフロマン代表は、早期妥結を求める両首脳の指示を受け、23、24の両日で3回にわたって会談。首脳会談が終わった後も、共同声明の公表を翌日に延期して結果を待つという異例の展開になった。

日本の複数の交渉関係者によると、日本が高い関税を維持したいコメと麦については、米国産の輸入枠の拡大検討で、関税をほぼ維持できる見通しになった。だが、牛肉は、関税をゼロに近い水準まで下げるよう求める米国に対し、日本は20%前後にとどめる考えを示し、結論は出なかった。

豚肉も、安い肉ほど関税が高くなる「差額関税制度」で、撤廃を求める米国と、畜産農家を守るため制度自体は残したい日本の対立は続いている。すべての品目で一致することが大筋合意の前提だが、甘利氏は「首脳が加速を指示して1日、2日でまとまるなら、こんな苦労はしない」と難航していることを認めた。

日米両政府は、アジア太平洋地域に新たな投資や貿易のルールをつくり、中国を将来的に取り込む戦略を描く。新薬などの特許や著作権の保護、企業が進出する際の公平な扱いや権利保護といったルールづくりでは、多くの分野で日米の方向性は一致している。

ただ、参加12カ国のGDP(国内総生産)で約8割を占める日米はいま、二国間の貿易問題に交渉のエネルギーの大半を注いでいる。交渉全体が早期妥結に向けて進むかも見通せず、「年内妥結」は困難との見方が浮上している。

 

■日米共同声明(骨子)

・TPP交渉の早期妥結を目指すことを確認

尖閣諸島日米安全保障条約の対象

東シナ海南シナ海での力による現状変更に反対

集団的自衛権の行使容認の検討への支持、歓迎

・北朝鮮の核・ミサイル問題に対し、日米韓で対応

・ロシアによるクリミア併合を国際法違反と非難

 

〈+d〉デジタル版に共同声明全文