25日に発表された日米首脳会談の共同声明では、日中の緊張が続く尖閣諸島が日米安全保障条約の対象になると明記された。安倍政権は米国から尖閣を防衛する確約を得られたとして、会談の「最大の成果」と強調する。声明を読み解くと、安倍政権がめざす集団的自衛権の行使などの政策転換を反映し、日米同盟が変質しつつあることが浮かび上がる。▼社会面=61市町村が意見書

 

■想定事態を拡大 米、条約の枠外でも関与

共同声明はまず、米国は「日米安保条約のもとでの『コミットメント』(約束、確約)」を果たすと言及。その対象は「尖閣諸島を含む日本の施政下の全領域」と明記した。

条約の「約束」とは、5条に書かれた米国による日本の防衛義務を指す。これだけだと条約の再確認にすぎないが、声明は次の一文で「米国は、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と踏み込んだ。

5条で米国の日本を防衛する義務が生じるのは、日本が「武力攻撃」を受けた場合だけだ。政府解釈で武力攻撃は「組織的、計画的な武力の行使」とされ、敵国の軍隊による侵略などが想定されてきた。

共同声明の「いかなる一方的な行動」とは、具体的にどんなケースなのか。安倍政権が想定するのは、漁民を装った武装勢力が尖閣諸島に上陸して占拠する事態などだ。政権は武力攻撃に当たらないケースでも自衛隊が迅速に出動できるよう、集団的自衛権の行使容認とは別に関連法を見直そうとしている。

声明の作成に関わった日本政府関係者は「非常に概念の広い言葉」と説明。安保条約が定める侵略や武力攻撃を受けた場合でなくても、米国が尖閣で起きた事態に乗り出すことを示唆している。

こうした事例は「グレーゾーン事態」と呼ばれ、安倍晋三首相も昨秋の国会答弁で「漁民と思われるけれども、重武装しているかもしれない。法的な基盤を作っておく必要も当然ある」などと意欲を示した。

尖閣諸島問題で米国の関与を広げる共同声明の表現は、日本が米側に働きかける形で盛り込まれた。政府関係者は「米軍の役割を広げておくことが、中国に対する抑止力になる」と説明する。

 

■防衛分担へ布石 安倍政権「日本も米守る」

米国が尖閣諸島を守る姿勢を示すことに、安倍首相はずっとこだわってきた。昨年2月の国会では「尖閣も(安保条約)5条の対象になることはケリー国務長官も明確に示している。尖閣で力の行使をしようと思えば、日本だけでなく日米を相手にしなければならない」と強調した。

ただ首相は、今の安保条約の枠を超え、日本がより大きな役割を果たすこともめざしている。

1960年、米側との安保条約改定交渉で新たに5条が盛り込まれた際、祖父の岸信介首相(当時)は国会で「日本は基地を提供しておるけれども、米国は日本を防衛する義務を負う」と答弁。米国が日本を守る義務を定めた5条は、日本が米国に基地を提供する義務を定めた6条がセットとなり、両国が義務を分かち合う「双務的な条約」になると説明した。

しかし安倍首相は今年3月の国会で5、6条の「双務性」に触れつつ、今の憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使を認め、米国を守るべきだと強調。できなければ「同盟関係が大きく毀損(きそん)される」と訴えた。

共同声明では、米国による尖閣防衛に加え、集団的自衛権行使の検討に対する米側の支持も明記された。安倍政権は、米国の力で中国の海洋進出にクギを刺し、安保政策の転換についても米側のお墨付きを得る形になった。両国は今年末にも「防衛協力のための指針」(ガイドライン)を見直す方針だが、米国だけに日本を守る義務がある今の条約の実質的な改定につながる可能性も出てきた。

(鶴岡正寛)

 

日米安保条約

<5条> 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する(後略)

<6条> 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される(同)