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2014年6月2日
国会では集団的自衛権行使を巡る集中審議や与党協議が行われ、連日、侃々諤々(かんかんがくがく)やっているが、忘れ去られていることがある。憲法9条の問題は、憲法制定直後から国際情勢の変化もあって、さまざまな議論が積み重ねられてきたという歴史的経緯だ。先人たちは、その議論の中で、9条の趣旨、精神、枠を守るために知恵を絞り、苦労してきた。それをなぜ、安倍は「私が最高責任者だ」とひっくり返せるのか? 「歴史の生き証人」の怒ること。
■安倍首相がやっているのは爺さんの仇討
――集団的自衛権の議論をどう見ていますか?
安倍首相もメディアも、あまりにも歴史を知らずにワーワーやっている。だから、歴史を踏まえた体系的な議論になっていないんです。こんなことじゃいかんですよ。
――国会での議論は、朝鮮有事の際、日本人を米艦船で救い出す事例などを話し合っていますね。
北朝鮮の金日成総書記が亡くなった後、1997年ごろですか、本当の危機があって、話し合っています。日本人をどうやって助け出すか、という議論です。米軍の船に乗せるなんていうのはあり得ないこと。米軍にそんな余裕があるわけないし、日本がやらなきゃいかんのです。ああいう事例を出すのは、バカな学者のイタズラですよ。
――憲法の枠内で有事の際にどうするか。これはずっと議論されてきたことなんですよね。
そうです。小泉内閣の時、私は自由党の国対委員長でしたが、有事立法の議論で、こう国会質問したんです。「国連主義と憲法9条の枠をがっちり入れて、日本の安全をどう守るかということをきっちりやりましょう。特別立法でバクテリアを増やすようなことではなく、安全保障基本法のようなものを作る。これ以上おかしくしちゃダメだ」とね。そうしたら福田官房長官がエレベーターの中で肩を叩いてきて、「平野さん、ぜひやりましょう」って。
――その福田さんは第1次安倍政権がつくった安保法制懇を棚上げして、事実上潰しましたね。解釈改憲なんかじゃなくて、ちゃんとやれということでしょう。そうしたら、第2次安倍政権が復活させて、こうなっている。
爺さん(岸信介元首相)の仇(あだ)討ちをしたいというのかね。今までのやり方でできるもの、個別的自衛権でできるものをあえて、集団的自衛権と言いたいのでしょう。(つづく)
▽ひらの・さだお 1935年高知県生まれ、78歳。法政大学大学院政治学修士課程修了。衆議院事務局に入り、副議長(園田直)秘書、議長(前尾繁三郞)秘書などを経て、委員部長となる。92年から参院議員。一貫して小沢一郎と行動を共にし、04年政界引退。以降、政治評論・執筆活動を続けている。