毎日新聞 2014年06月07日 02時06分(最終更新 06月07日 02時10分)
多国籍軍が平和を乱した国に武力行使する際の自衛隊の「後方支援」に関し、政府は6日の「安全保障法制の整備に関する与党協議会」で新基準を示した。現在は「非戦闘地域」に限り自衛隊の活動を認めているが、新基準では一時的にでも戦闘が行われていなければ戦場でも活動できるようになる。自衛隊が後方支援で活動できる範囲が広まり、戦闘に巻き込まれる可能性も高まる。【青木純、飼手勇介】
政府は自衛隊の後方支援に関し現在は、(1)戦闘の現場で多国籍軍に武器・弾薬を渡すなど「他国の武力行使との一体化」に当たるような活動は憲法違反で認めない(2)戦闘が行われておらず、将来的にも戦闘が行われない「非戦闘地域」での活動に限る−−との二つの制限を設けている。そうすることで憲法違反になる活動を避けてきた。
政府は3日の協議会で、「非戦闘地域」の制限を撤廃することを提案。さらに、(1)の「一体化」を判断する4条件をクリアすれば、戦闘地域でも後方支援を可能にする考えを示した。6日の協議会で、政府は「非戦闘地域」の概念は引き続き撤廃するとした。政府はこれまでも「戦闘地域に入れば即、憲法違反というわけではない。他国の武力行使と一体化しなければ問題はない」(政府関係者)と解釈しており、公明党も「非戦闘地域」の撤廃は現行の憲法解釈を踏まえたものとして理解を示した。
4条件については、政府は撤回し、(1)現に戦闘中の現場では支援しない(2)戦闘現場となった場合は支援を中止する(3)人道的な捜索・救助は例外とする−−との新基準を示した。これにより、戦闘中の後方支援はしないことが明確になったとして、公明党もおおむね賛同する方向になっている。
ただ、戦地で、いつ、どこで戦闘になるかを予測するのは困難だ。ある時点で戦闘が行われていなくても、水や食料を輸送している自衛隊車両が砲撃を受けたり、地雷などで攻撃されたりする恐れは否定できない。新基準の(2)も死傷者を出さずに撤退できる保証はない。文民や負傷した兵隊の捜索・救助を念頭に置いた(3)も、公明党からは「自衛隊が襲われ、多数の死者が出る恐れがある」との声が出た。