だれが安倍さんを支持しているのか。取材した「愛国者」を名乗る奥さん方の評判は微妙です。ただ、「守らなきゃ」という息子を見るような感覚が支えているのかもしれない。

この間、テレビのバラエティー番組に出演する安倍さんを見ていてびっくりしました。イチゴをフォークで、わざわざ半分に切って食べていたんです。この違和感って何だろうと考えたら、「安倍さんは子どもなんだ」と思い至った。

安倍さんは、子どもっぽいファンタジーの世界で、まったく役にも立たないことを、子どもならではの大胆さでやろうとしている。ヤンキーのケンカさながらに「友達がやられたから、守らなきゃ」みたいに集団的自衛権を論じている。国の政策ってそんなレベルの話じゃないでしょう。

でも、進め方がうまい。雲行きが怪しくなったら、北朝鮮の拉致被害者の話が出てくる。安倍さんの批判勢力は、もう手も足も出ない感じじゃないですか。「安倍さん、よくやってくれた」という空気をつくりたいのではないかと、うがった見方をしてしまう。色んなことが操作されているのかも、と信用できない。

安倍政権の発足から秘密法の成立、集団的自衛権の行使。すべてがつながっているように見える。ヘイトスピーチのように感情的に疑い合う言葉しか出てこない世の中になるなか、実は他国に人を殺しに行くということがすごくリアルになっている。国家への冷静な批判を許さない空気も感じます。怖いなと思う。

いま、オウム真理教元信徒、菊地直子被告の裁判を取材しています。集団的自衛権がもたらす未来は、「ポア」という宗教用語を使って殺人を繰り返し、最終的には破滅した教団と同じなのではないか。元信徒は異議をとなえず、「今から思えばおかしいが、当時は感覚的に正しいと思った」と言う。彼らにとっても、戦いはいつも「自衛」のためだった。そんな論理にだまされたくはない。

安倍さんには「イチゴは一口で食べなさい。そして、大人の政治をしなさい」と言いたいですね。

(聞き手・牛尾梓、写真は西田裕樹)

きたはら・みのり ライター。女性向けのアダルトグッズストア「ラブピースクラブ」代表。著書に「奥さまは愛国」など。43歳。