2014年6月19日05時00分
他国を武力で守る集団的自衛権の行使について、自衛隊が中東で機雷除去を行うのは、安倍晋三首相が言う「限定的な行使」の範囲を超えるのではないか、と公明党が追及している。集団的自衛権を使える範囲を広げたい政府・自民党と、日本周辺など狭い範囲に限って「歯止め」をかけたい公明党とのせめぎ合いの焦点になっている。
「安倍晋三首相は国会答弁などで『武力行使を目的に自衛隊を海外派遣はしない』と言っている。もし、機雷掃海が武力行使なら矛盾するのではないか」
17日の与党協議。公明党の井上義久幹事長は語気を強めて、自民党幹部らに迫った。公明党が協議で時間の大半を割いたのが、中東ペルシャ湾などを念頭に置いた海上交通路(シーレーン)での機雷除去に、集団的自衛権を使えるかどうかだった。
安倍首相は5月15日の記者会見や国会答弁などで、「自衛隊が武力行使を目的として、湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは決してない」と強調してきた。
一方、海中への機雷の敷設や除去は、国際法では武力行使とみなされている。たとえば、船舶が触れれば爆発する機雷を海にまく行為は、相手国を攻撃する「兵士」をしのばせておくようなもので武力行使にあたる、という理屈だ。同時に、機雷を戦争中に取り除くことも「兵士」を強制的に排除する行為と考えると、武力行使といえる。
つまり、機雷がまかれる場所は戦闘が行われている地域であり、自衛隊が集団的自衛権を使って機雷除去に行くことは、武力行使を目的に戦闘に参加することではないのか。井上氏の突いたのは、そうした首相の発言の矛盾点だった。
井上氏の指摘に対し、自民党の参加者からも「武力行使となる機雷除去にこだわり過ぎると、自衛隊を派遣しづらくなる」との懸念の声もあがったという。
この問題点は、すでに国会の質疑でも指摘されていた。6月9日の参院決算委員会で、共産党の井上哲士氏が「機雷除去は武力行使だ。機雷除去を目的に行くことは、武力行使を目的に行くことだ。首相の言っていることには食い違いがある」と追及した。
これに対し、首相は「敵を撃破するために大規模な空爆をしたり、敵地に攻め込んだりという行為とは性格を異にする」と反論。機雷除去は「基本的に受動的かつ限定的な行為だ」として、戦闘行為としての武力攻撃とは違う武力行使だ、と言い張った。
その背景には、日本の輸入原油の8割超が通過するペルシャ湾のホルムズ海峡で機雷除去を行うためには、自衛隊の活動範囲に地理的な制限をかけられたくないとの思惑がある。しかし、武力行使の定義を二つに分けてしまうような首相の答弁は、湾岸戦争やイラク戦争などのような事態で、自衛隊が行える武力行使の活動の内容をあいまいにし、拡大させてしまうおそれもある。
一方、公明党が、機雷除去の問題に力を入れるのは、仮に集団的自衛権の行使を認めたとしても、使える範囲を朝鮮半島有事など日本周辺の狭い地域に限りたいからだ。このため、湾岸戦争のときに、実際にどう機雷除去が行われたかの経緯を参考にしながら、集団的自衛権を使わず、警察権で対応できる方法を訴えていく考えだ。
- (@北京)中国の「異質」浮き彫り アジア安全保障会議 (06/19)[特派員リポート]
- (AKB的人生論)宮脇咲良 作家や医師にもなりたい (06/14) [AKB的人生論]
- (デジタルトレンド・チェック!)家庭用ゲーム復活ののろし 「E3 2014」レポート (06/13) [デジタルトレンド・チェック!]
- (皇族方の素顔)両陛下、沿線と心結んだトロッコ列車 (06/04) [皇族方の素顔]