毎日新聞 2014年06月22日 東京朝刊
自国は戦争を仕掛けられていなくても、同盟国が地球のどこかで戦っていれば協力するというのが集団的自衛権の本質だ。「大量破壊兵器の保有」というでっち上げの理由でイラクを攻撃した米国は、世界で唯一の「自由に戦争ができる国」だ。集団的自衛権の行使とは、そんな国の戦争に手を貸すということだ。
にもかかわらず批判の声で大騒ぎにならないのは、中国や北朝鮮を何となく危ないとみる空気が背景にあるだろう。このままでは日本が危機に陥るかのように安倍政権は言っている。しかし国民を守るのなら、いまの憲法解釈でも認められている個別的自衛権で対応できるのだ。
安倍晋三首相は、日本が戦後築いてきたルールや仕組みをひっくり返すことに情念を燃やしている。「自分の言うことが最終決定だ」ともいわんばかりの政治姿勢だ。かつての自民党は、国会で多数を占めても、政権の暴走にブレーキをかけることがあった。今はほとんど反対論が出ない。戦前の翼賛体制を思い出す。
民主党が政権運営に失敗したことへの反動で、自民党に風が吹き、今の政権が誕生した。しかし世論調査を見ると、集団的自衛権の行使容認にはかなりの国民が困惑していることがうかがえる。現政権をつくった投票行動に、「しまった」と考えている人は多いはずだ。だが次の国政選挙まで、この流れは進むだろう。流れを変えるには、次の投票行動でその意思を示すしかない。【聞き手・竹内良和】=随時掲載
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■人物略歴
◇とりごえ・しゅんたろう
新聞記者、「サンデー毎日」編集長を経て報道番組のキャスターに。「ニュースの職人」として活動。