原子力規制を担う「人」をめぐって先週末、見過ごせないことが二つ相次いだ。

一つは、原子力規制委員会の委員に9月に就任することが決まった田中知(さとる)・東大教授が、核燃料サイクルを担う「日本原燃」と原発メーカーの「三菱FBRシステムズ」から、今年前半まで報酬を受けとっていたと明らかになったことだ。

もう一つは、規制委の下で実務にあたる原子力規制庁のナンバー2、森本英香次長が8日付で出身の環境省官房長として戻ることになったことである。

いずれも、原発事故の反省に基づいて決められたルールとの関係が微妙だ。

田中氏が原発関連2社から報酬を得ていたことは、民主党政権が作ったガイドラインに触れる。ガイドラインは、規制委の原発推進側からの独立を担保するためのものだった。

規制委を所管する石原環境相は「民主党時代のガイドラインは考慮していない」と述べている。だが、このままガイドライン撤廃で良いのか。

さらに田中氏が報酬について「立場上、お話しできない」と明らかにしない点も不可解だ。

規制委は、その下の審査委員などにも規制対象企業からの独立を求め、年間50万円以上の報酬などは自主申告させている。

今年4月に田中氏が審査委員に任命された際には申告していないから、50万円未満なのかもしれない。そうならば率直にそう答えるべきであろう。何も説明しないことを国民はどうとらえるだろうか。

そもそも、田中氏の規制委委員就任については、ガイドライン上問題と国会で指摘された経緯もある。10~12年に業界団体「日本原子力産業協会」の理事を務めており、独立性が疑問視されたのだ。

もう一つが、森本次長の異動だ。森本次長は実質的に規制庁の顔として記者会見などを取り仕切ってきた人物である。

規制庁職員には、原子力を推進する立場の官庁には戻さない「ノーリターン・ルール」がある。職員が出身官庁の意向を気にしないで済むようにすることで、規制庁の独立性を担保するのが狙いだ。

環境省が推進官庁ではないとしても、ここからルールがなし崩しになることは、ないのだろうか。ガイドラインに続いて「のど元過ぎれば熱さを忘れる」では困る。

規制委も、規制庁も、国民からの信頼を得ることが大前提のはずだ。自ら損なってはならない。