米ワシントンを訪問中の小野寺五典防衛相は11日午後(日本時間12日早朝)、国防総省ヘーゲル米国防長官と会談した。小野寺氏が安倍内閣閣議決定した集団的自衛権の行使容認について説明すると、ヘーゲル氏は歓迎を表明。年内に改定する日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に反映させることを確認した。ただ、集団的自衛権への期待は日米で「同床異夢」の面もあり、今後の調整が課題だ。

 

「ガイドラインは今回の閣議決定の内容を十分反映させた画期的なものになるよう、今後作業を進めていきたい」。小野寺氏は会談後の共同記者会見で、集団的自衛権の行使を認める閣議決定の意義を説明。平時に自衛隊が共に行動する米艦艇を守るための自衛隊法改正や、米軍への後方支援を拡大する法整備に入る方針を伝えるなど、日米同盟の強化につながるとアピールした。

一方のヘーゲル氏も、「この大胆かつ画期的な決定によって法整備すると、地域及び世界の安全保障に対する貢献が増大する。米政府は強力に支持する」と手放しで評価した。

集団的自衛権の行使容認は、米国が以前から、日本に強く要求してきた。知日派は「集団的自衛権の禁止は同盟の障害」と繰り返し指摘した。安倍内閣が行使容認に踏み切ったことで、米国は同盟における日本の役割の強化を期待する。

両首脳は、集団的自衛権の行使を反映した日米ガイドラインについて、年内に改定できるよう作業を加速化することや、途中段階で中間報告をつくることで一致した。

ヘーゲル氏は会見で「日本政府の決定によって、日米ガイドラインは画期的な形での改定が可能になる」と期待感を示した。

 

■日―尖閣に米関与狙う 米―広範囲な貢献期待

日本が集団的自衛権を使うことで、日米当局とも「同盟強化」につながると考えているが、その思惑はそれぞれだ。

日本の真の狙いは、中国との緊張関係が高まる中で、米国をつなぎとめることにある。日本は、尖閣諸島などの離島をめぐって中国と小競り合いが生じたときなどに、米軍にできるだけ関わってほしいと考えている。

とりわけ日本は、武装集団が尖閣諸島を不法に占拠するケースなど、今の海上保安庁や警察などでは対応できないが、戦争までには至っていない「グレーゾーン事態」を想定。今回のガイドライン見直しでは、この事態に米国をいかに関わらせるかを重視している。

これに対し、米国には尖閣諸島をめぐる日中間の争いに巻き込まれることには警戒感がある。沖縄に駐留する米軍のトップを務めたこともあるグレグソン元国防次官補は「『米国が戦ってくれる』と言うより、まず日本が尖閣諸島を守る能力を持つことが重要だ」と牽制(けんせい)する。

一方、オバマ政権は、同盟国に一層の役割を求める新たな安全保障政策の中に、日本の集団的自衛権やガイドライン見直しを位置づける。米政府の財政難で国防予算が削られる中で、アジア太平洋地域では中国に対抗しなくてはならない。それを日本など同盟国との協力拡大でしのごうとしているためだ。ヘーゲル氏は会見で、日本に期待する貢献分野として、ミサイル防衛、大量破壊兵器の拡散防止、対海賊作戦、広範な軍事演習などを挙げた。

しかし、日本も財政難は同じだ。日米同盟への関わりを強めるために軍事力を強化しすぎれば、公明党や野党、世論が反発する可能性もある。

今回の会談で、グレーゾーン事態での日米協力については「具体的な議論には至らなかった」(防衛省幹部)という。年末に向けての日米交渉で、こうした「認識のギャップ」をいかに埋めるかが焦点だ。

(ワシントン=今野忍、大島隆小林哲

 

キーワード

<日米防衛協力のための指針(ガイドライン)> 日本が他国に攻撃されたときや、周辺有事(戦争)での自衛隊と米軍の具体的な役割分担を定めた文書。冷戦下の1978年、旧ソ連の日本侵攻に備えて初めて作られた。97年の改定では北朝鮮の核開発疑惑やミサイル発射実験を受け、朝鮮半島有事を想定。99年に周辺有事での米軍への後方支援を可能にする周辺事態法が成立した。安倍内閣は年内にガイドラインを再改定した後、集団的自衛権と新たなガイドラインに関わる法整備を進める方針。

 

■日米防衛協力をめぐる動き

1978年11月 日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を策定

91年12月 ソビエト連邦が崩壊

93年5月 北朝鮮によるミサイル発射実験

97年9月 新ガイドラインを策定

99年5月 周辺事態法成立

2001年9月 米同時多発テロ発生

03年6月 有事関連3法が成立

06年5月 「再編実施のための日米ロードマップ」発表

13年10月 日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)でガイドラインの14年末までの再改定で合意

14年7月 安倍内閣集団的自衛権の行使容認を閣議決定