集団的自衛権をめぐる14、15両日の国会論戦で、安倍晋三首相は何にこだわり、何を答えなかったのか。衆参両院の予算委で計14時間行われた質疑から、浮かび上がった論点や首相の姿勢について、識者らと読み解いた。▼1面参照

 

■こだわる 機雷除去、経済理由でも

「海外派兵は『一般に』許されない、という原則は全く変わっていない」。安倍晋三首相は14、15両日の答弁で、憲法解釈を変えても、他国の領域内では集団的自衛権を使わない「歯止め」があると繰り返した。

なぜ「一般に」という留保を付けるのか。そこに込めた首相のこだわりが示されたのが、中東・ペルシャ湾のホルムズ海峡での機雷除去をめぐる答弁だ。

政府は従来この事例を「海外での武力行使」にあたるとして禁じてきた。これに対し首相は今回、集団的自衛権多国籍軍による集団安全保障で日本が武力を使う有力なケースとして機雷除去を持ち出した。

「海外で武力は使わない」としつつ「機雷除去はできる」と主張する根拠が、閣議決定に盛り込まれた「武力行使の新3要件」だ。「国民の権利を根底から覆すような明白な危険」があれば、武力行使が正当化される――。首相は3要件を根拠に、機雷で原油を運ぶ海上交通路が封鎖されれば「経済的な危機に見舞われる」「国民生活に死活的影響が出る」と強調。米国が直接攻撃された場合も「日米同盟は死活的に重要」として、集団的自衛権を使うケースになり得ると答弁した。

柳沢協二・元内閣官房副長官補は「政府が『経済的な打撃を受ける』『日米同盟が揺らぐ』という二つの理由で、武力行使を始める論理を作っていることが分かった。閣議決定は一見、厳格な制約をかけているように読めるが、歯止めは何もかかっていない。無制限に武力を使えることが浮き彫りになった」と話す。

(園田耕司)

 

■避ける 中韓関係、乏しい言及

一方で「自衛隊員の生命の危険」と並び、安倍首相が質問されても明言を避けたのが、行使容認に懸念を示す中国や韓国との関係だ。

ニュージーランド豪州パプアニューギニアに(今月)出張した。(これ以外に)39カ国を訪問し、閣議決定などを説明し、おおむね支持、理解をいただいている」。首相は15日の答弁で、日本の安全保障政策が国際社会の理解を得ていると主張した。

野党からは、首相の靖国参拝や歴史認識問題をめぐり悪化している中韓両国との関係について「韓国にほとんど説明していないのでは」「信頼関係を醸成するため、在任中は靖国参拝しないと明言すべきだ」などと指摘する質問が相次いだ。

しかし、首相は「韓国に理解していただけるようにしたい」「他国に対して、行かないとか行くとか約束すべきものではない」と答えるにとどまった。

集団的自衛権を使う対象となる「密接な関係にある他国」についても質問が出た。日本維新の会片山虎之助氏は15日の参院予算委で「(行使対象国を)事前に指定しないのか」とただしたが、首相は「武力攻撃が発生した段階で考える」「米国以外は相当限定されている」などと明示しなかった。

高原明生・東大教授(現代中国政治)は「外交全体を見れば中韓など隣国との関係改善は避けられない。習近平(シーチンピン)国家主席朴槿恵(パククネ)大統領に、日本との協力による共通利益の大きさを説くべきだ」と指摘する。

(渡辺丘)

 

■攻撃する 民主に矛先、自席からヤジも

15日の参院予算委。閣議決定による憲法解釈の変更について、民主党福山哲郎氏が横畠裕介内閣法制局長官に再三質問すると、安倍首相はこんな言葉で批判の矛先を向けた。「民主党政権では法制局長官の答弁を禁止した。憲法解釈は政治性を帯びるので、内閣が国会に提示するのが妥当と言っていたはずだ」

質問に答える際に相手を攻撃するのは、首相の特徴の一つ。野党議員に自席からヤジを飛ばすこともしばしばだ。14日も、民主党海江田万里代表が、集団的自衛権の行使容認について「抑止力を高めれば平和が保たれるのか」とただすと、挑発的な言葉を返した。「野党第1党の党首としてそれでいいのか。全く抑止力を認めていないのか。さすが民主党だ」

一方で、質問をはぐらかしたり、事務方が準備した書類の読み上げに徹したりする場面も目立つ。

「今回の憲法解釈の変更で、自衛隊員が命を落とす危険は増えるのでは」。民主党岡田克也元代表は14日の衆院予算委で何度も質問したが、首相は「これは憲法解釈の問題ではない」などと直接答えず、同じような答弁を繰り返した。

「アイドル政治家症候群」などの著書がある臨床心理士の矢幡洋氏は、首相の答弁には質問者の弱点を突く「攻撃型」と、用意した文書を読み上げる「官僚型」があると指摘する。「いずれも首相の深い自己愛から生じているのではないか。目の前にいる質問者に負けたくないという感情が強いように見える。しかし国会は国民の代表者の集まりだ。国民に丁寧に説明する姿勢が求められている」

鯨岡仁

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コメント:国民の命を守る為と言うが、憲法を壊すのは真逆、戦争・テロなどで自衛官・国民は死の最前線に立つ!