果たしてこれが、国民の「知る権利」を守るための、実効的な「歯止め」となるのか。甚だ疑問だと言わざるを得ない。

昨日、「情報保全諮問会議」(座長=渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長・主筆)が開かれ、特定秘密保護法の指定や解除に関する運用基準の素案などが了承された。

会議では、安倍首相が「秘密の取り扱いの客観性と透明性がより一層進展することが期待される」とあいさつ。渡辺氏は、報道・言論が不当に規制されぬよう細かく配慮されていると評価した。しかし、恣意(しい)的に運用される危険性は残ったままだ。

特定秘密に当たる情報については、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野で55項目に細目化した。だが、どの文書がどの項目に当てはまるかの解釈は各省庁に委ねられる。

特定秘密の指定期間は「適切と考えられる最も短い期間」とされた。だがこれも各省庁の判断次第だ。また、秘密として指定された期間が30年以下の文書は、「歴史的公文書」に当たらなければ首相の同意を得て廃棄できる。なにが「歴史的」か、その定義は不明確だ。

内閣府に新たに置かれる「独立公文書管理監」は、各省庁の大臣らに特定秘密の提出を求め、運用基準に合わないと判断すれば指定解除を要求できる。ただし、大臣らは「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす」ことを理由に、管理監への情報開示を拒否できる。

振り返っておく。秘密法に対する国民の根強い批判は、何が秘密に当たるのかがわからず、秘密の範囲が際限なく広がる危険性があること、しかもそれが半永久的に公開されない可能性があるという点に向けられた。今回示された運用基準は、この批判に応えられていない。

諮問会議は、政府に直接意見を言える唯一の外部機関だ。厳格な基準作りを期待する向きもあった。だが、そもそも法律の欠陥を、運用で根本的に埋め合わせるのは無理だ。「欠陥住宅」に住み続けるコツに知恵を絞るよりも、建て直す知恵をこそ絞るべきではないのか。

政府は今後、運用基準などについてパブリックコメント(意見公募)を行い、それを踏まえて諮問会議で再度議論した後、閣議決定する方針だ。諮問会議の委員からは、パブコメへの真摯(しんし)な対応を求める意見が出たという。当然である。

秘密法のパブコメに寄せられた意見の約8割は「反対」だったが、置き去りにされた。同じことを繰り返してはならない。