「11兆円の請求書」が私たちに回されようとしている。

東京電力福島第一原発事故によって生じた対策費用のことである。そのかなりの部分が、私たちの電気代や税金から賄われることになりそうなのだ。

対策費の総額については、立命館大学の大島堅一教授と大阪市立大学の除本理史(よけもとまさふみ)教授が、損害賠償(約4兆9千億円)や除染(約2兆5千億円)など、個別の項目を積み上げ、少なくとも11兆円にのぼると分析した。

この費用は誰が負担すべきなのか。3年前のあの原発事故は「人災」だった。国会の事故調査委員会は、「何度も地震・津波のリスクに対応する機会があった」と東電の対策の不備を厳しく指摘した。まずは東電がこの費用を負担するのが当然だが、実際には、東電の負担はわずかで、きちんとした説明がないまま、電気利用者や国民への転嫁が進んでいる。

たとえば経済産業省が2011年10月の会計規則の変更で、電気料金の原価に含めることを認めた「一般負担金」。これは、原子力損害賠償支援機構が東電に用意した賠償資金を賄うため、東電と他の電力会社が機構に返すお金だ。

関西電力は13年5月の値上げの際に、一般負担金を原価に算入。大島教授の推計だと、平均的な家庭の月額電気料金7301円のうち、65円になる。関電の利用者で、この負担についてしっかり説明を受けた人はいるだろうか。

同様に、北海道、東北、東京、中部、四国、九州の電力各社も、すでに負担金を原価に算入している。東電管内に住む筆者も払う。東電の経営幹部らが地震や津波への対策を先送りした結果とされる事故の代償を、なぜ私が負わないといけないのか。

昨年11月、安倍政権は事故対策で「国が前に出る」と、東電任せの対応の転換を表明した。費用負担という面からみると、国庫に入れるべき機構保有の東電株の売却益を除染にあて、電気料金に上乗せした税金を原資とする特別会計中間貯蔵施設の建設に使う、というものだ。

適切な指導や監督ができなかったという国の責任を認めたうえで国費を投入するというのならまだ理解できる。だが、そんな説明を政府から聞いた記憶はない。結局、節操もなく「取りやすいところから取る」ということか。

政府は「11兆円の請求書」をしっかりと説明するべきだ。原発はひとたび事故が起きれば、膨大なコストが後からかかる。原発を再稼働しようというのなら、なおさら、そうした負担を、表に出さなければいけない。

(こもりあつし 編集委員)