中部電力(本店・名古屋市)の元役員が、取引先の建設会社などに工面させた資金を長年簿外で管理して政界対策に充ててきたと朝日新聞に証言した。元役員は政界工作を長年担当し、2004年までの約20年間に少なくとも計2億5千万円を政界対策のために受け取り、多くを知事や国会議員ら政治家側に渡したという。建設会社側への見返りとして「原発関連工事などの発注額に上乗せした」とも証言しており、政界対策資金が利用者が支払う電気料金で賄われた可能性がある。▼39面=法に抵触、認識

 

■原発工事、発注上乗せも

元役員の証言によれば大手建設会社2社と名古屋市電子部品製造会社から1985年には資金提供が始まり、建設会社2社からは95年まで、電子部品製造会社からは04年まで続いた。この間は毎年、建設会社2社から計1千万~1500万円、電子部品製造会社からは100万~200万円を受領。これら3社と別に大手建設会社から93年に2回、それぞれ1億円と4千万円を受け取ったという。

建設会社などが工面した資金は元役員が自ら受け取り、会計帳簿類に記載しないで出納管理した。中部電管内の知事選の際に知事や選対幹部らに手渡したほか、三重県内で計画され、00年に撤回された芦浜(あしはま)原発の立地対策にも数百万円程度を使った。原発政策や電力事業を円滑に進めるためだったという。

元役員は建設会社への見返りとして、工事の発注を統括する中部電資材部の幹部に依頼し、浜岡原発5号機の関連工事などを利用して「発注額に上乗せしたり、工事に参入させたりして返した」と証言した。

中部電に資金協力した建設会社3社と電子部品製造会社のうち、建設会社1社の元名古屋支店幹部は「70年ごろから資金を提供した」と大筋で事実関係を認めた。他社の関係者は「話すことはできない」「分からない」などと答えた。

(砂押博雄、板橋洋佳)

中部電力広報部は取材に「そのような事実は承知していない」と回答。建設会社3社は「そのような事実は把握していない」「事実を確認できないのでコメントは差し控える」とした。

 

電気料金に転嫁

《解説》政界対策資金を建設会社に恒常的に工面させる中部電力の裏金システムが明らかになった。電力会社は、原発工事費など電気をつくり届けるのにかかった費用を全て電気料金に上乗せできる「総括原価方式」だ。工面させた裏金分も工事費に潜り込ませて建設会社に支払い、埋め合わせできる。電気利用者は知らないうちに裏金分も負担していたことになる。

東京電力が原発の地元対策で建設会社に裏金を肩代わりさせたことが朝日新聞報道で発覚しているが、中部電元役員の証言はこの手口が他の電力会社にもあったことを示している。福島第一原発事故後に高コスト体質を生む総括原価方式の問題点が指摘され始めたが、3年以上たっても有効な改善策はできていない。不正の温床になりうる仕組みは今も残存している。

中部電元役員は原発事故に直面して裏金システムを打ち明ける決意をしたという。不透明な慣行を許してきた地域独占や総括原価方式の仕組みを抜本的に改めなければ、電力会社の信頼回復への道筋は見えないままだ。(市田隆)

 

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