社説:秘密法の運用案 拡大の恐れ止められぬ

毎日新聞 2014年07月20日 東京朝刊

 国の重要な情報が隠され、国民の知る権利がないがしろにされる懸念は、依然として拭えないままだ。

特定秘密保護法の年内の施行に向け、政府は運用基準の素案を有識者会議「情報保全諮問会議」(座長・渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長兼主筆)に提示した。しかし、行政が情報を恣意(しい)的に秘密指定し、不都合な情報の隠蔽(いんぺい)を可能にするこの法律の危険性は、素案でも解消できていない。国の情報は基本的に国民に公開するという民主主義の原則に立ち返って考え直すべきだ。

素案は、特定秘密の指定や解除などについて政府内で統一的に運用するためにまとめたものだ。基本的な考え方として「法を拡張して解釈してはならず、必要最小限の情報を必要最低限の期間に限って指定する」と掲げた。もっともな考えだが、問題は実効性があるかどうかだ。

特定秘密の指定は防衛、外交など4分野が対象だが、素案は55項目に細分化した。しかし、例えば外交では「外国の政府等との交渉、協力の方針、内容のうち国際社会の平和と安全の確保に関するもの」などと、幅広く解釈できる表現が随所にあり、指定が拡大する余地を残した。

省庁が秘密指定を解除した文書などのうち指定から30年を超えるものは国立公文書館に移管すると明記したが、30年以下の文書は首相の同意があれば廃棄も可能とした。行政の隠蔽体質は沖縄密約文書の例からも明らかで、重要な文書が廃棄される可能性に歯止めはかかっていない。

不当な指定拡大や廃棄を防ぐにはチェック機関が十分に機能することが欠かせない。その役目を担うのが独立公文書管理監をトップに新設される情報保全監察室だが、実効性には疑問符がつく。秘密の概要を記したリストしか渡されず、問題があると判断すれば秘密情報の提出や説明を省庁に求めることができるが、省庁は安全保障に支障があるとの理由で拒否できる。これでは不正が疑われても突き止めることは難しい。

重層的にチェックするとして、官房長官がトップの内閣保全監視委員会も設置し、省庁に秘密情報の提出や是正要求ができると定めたが、あくまでも「身内」の組織であり、やはり実効性は疑わしい。チェック機能を果たすには、政府から独立し、かつ十分な権限を持つことが必要だが、いずれもそうした機関になっていない。

私たちは、この法律が国民の知る権利だけでなく基本的人権を侵害する恐れがあるとして廃止を求めてきた。政府は素案について国民に意見を募り、諮問会議で改めて検討するという。諮問会議は外部から政府に意見を言える唯一の機関であり、抜本的見直しを議論してもらいたい。

Categories 秘密保護法

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