政界対策資金として建設会社などに少なくとも2億5千万円を工面させ、簿外で管理してきたと朝日新聞に証言した中部電力元役員は、このうち計1億4千万円を2人の国会議員側に配ったことを明らかにした。中部電の裏金システムは地方政界にとどまらず、中央政界にも及んでいた。

元役員は自民党有力議員が東京都内で開く勉強会や朝食会に足しげく通い、親交を深めた。国会議員約20人が名古屋市を拠点とした後援会をつくるのにかかわり、中部電の発注工事に後援業者を参入させてほしいと頼まれたら発注先の大手建設会社に口利きした。首相経験者から依頼され、学生を中部電に入社させたこともあったという。元役員は「政治家を押さえれば霞が関にも影響力を行使できる」と語った。

元役員の証言によると、自民党が下野して政界再編が起きた1993年、中部電の管轄外を地盤とする国会議員(故人)が中部電幹部を通じ、新党結成資金として1億円の提供を求めてきた。手持ち資金では足りず、新たに大手建設会社に工面させたという。

「大きな紙袋二つに入れた1億円を新幹線で運び、都内にあった国会議員の事務所で秘書に手渡した。会社への謝礼として1%分の商品券を受け取った」

別の国会議員(故人)からも同年、中部電管内の県知事選候補の選挙資金に用立てる名目で4千万円を頼まれた。この時も大手建設会社に工面させ、議員の地元事務所にいた秘書に現金4千万円を届けたという。

元役員が名指しした秘書2人は取材に対し、現金授受を否定した。元役員は「自分が現金を運んだ。議員が言った名目通りに使われたかはわからない。あえて確かめない。議員の要求に応えたことに意味がある」と話した。

裏金の支出先は政界対策にとどまらない。元役員は「90年代に芦浜(あしはま)原発の地元対策の名目で1回あたり200万~300万円を支出した」とも証言した。中部電立地部幹部に頼まれ、裏金を手渡したという。裏金を工面しつづけた建設会社の元幹部も取材に「77年ごろに立地部から依頼され、500万円を芦浜の現地事務所に届けた」と述べた。

中部電は三重県南部の芦浜地区で63年から芦浜原発の立地を目指したが、2000年に断念。今も350万平方メートルの用地を保有したままだ。

今年5月、現地を取材すると、中部電社員らは70~90年代に地元漁協の反対派の切り崩し工作、賛成派のつなぎ留め工作を盛んに行ったという。94年には中部電から計15億円の漁業補償金が支払われ、元町議、元漁協幹部らは「中部電に飲食費をつけ回すことも日常的だった」と振り返った。中部電の現地事務所に渡った裏金がどこに渡ったかは確認できなかった。元役員は「原発の立地対策はブラックボックスだから」とつぶやいた。

中部電が建設会社に工面させ、簿外で管理してきた裏金は使い道が追い切れないほど様々な場面で投入された。元役員は「裏金を使わなくてすむ時代は来ないと思う」と語った。近年の中部電役員や秘書部幹部らに取材を申し込んだが、答えは「神経質な内容なので取材に協力できない」だった。(砂押博雄、阿久津篤史、板橋洋佳)

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