米国やフランスなどの「原発大国」で、事故が起きた際の住民避難のあり方が見直されつつある。東京電力福島第一原発の事故後、各国で周辺住民らの不安が高まったためだ。だが、原発再稼働に向けて避難計画づくりの難しさに直面する日本と同様、各国とも住民を安心させる計画づくりには苦慮している。▼3面=不安抱える住民

米国では、原発から半径10マイル(約16キロ)を緊急計画区域(EPZ)に定め、自治体が緊急時の避難計画を定めることになっている。しかし、福島第一原発の事故の際に米政府が半径50マイル(約80キロ)圏内の米国人に避難勧告を出したことを受け、各地でEPZの拡大を求める声が上がった。米連邦議会でも、上院の民主党有力議員らを中心に、住民避難を含む緊急時の対応強化を求める動きが出ている。

福島第一原発と同型の原子炉をもつピルグリム原発(米マサチューセッツ州)では、避難計画の対象範囲拡大を求める住民運動が起きている。同原発は避暑地に近く、夏場に事故が起きた場合、数十万人が避難できなくなるおそれがあるためだ。

反原発の市民団体「原子力資料情報サービス」(NIRS)は、米国の原子力規制委員会(NRC)に請願書を提出。日本で放射性物質が拡散した範囲を参考に、EPZを半径25マイル(約40キロ)に拡大し、50マイル圏内でも避難ルートを設定するよう求めた。だが、NRCは今年4月、「現状のままで十分対応できる」とし、応じていない。

50基超の原発が稼働し、原発依存度が約75%と世界一のフランスでは今年2月、政府レベルで、住民らを避難させる要件を決定。9月には、原発事故もにらんだ大規模な住民の避難を想定する計画をまとめる。

避難の具体的な指揮をとるのは県レベルだが、今後は地域間の連携を重視し、避難先になりうる体育館やホテルといった施設も全国で事前に調べる。早ければ2015年末にも訓練を実施するという。

内務省の担当者は「(万が一の場合には)混乱が起きるだろう」と認めつつ、「(準備を整えておくことで)やるべきことの見落としは防げる」とする。

23基の商業用原子炉を抱え、アジアでは最も原発依存度が高い韓国は、原発事故の際に住民を保護する方法を改善し、防災訓練の頻度も増やすことを決めた。事故時の対応や避難についても、原発事業者や周辺自治体が各地域の事情を考慮したマニュアルを備える。ただし、多くの住民は、マニュアルの存在や内容を知らないという。(ワシントン=小林哲、パリ=青田秀樹、ソウル=貝瀬秋彦)