2014衆院選:論戦総括 「負担増」を回避 医療・介護・年金…課題先送り

毎日新聞 2014年12月14日 東京朝刊

衆院選は14日に投開票される。12日間の論戦は政権の経済政策「アベノミクス」を中心に展開したが、後半は、野党側が集団的自衛権などで政権を攻撃する場面も増えた。一方で、待ち受ける社会保障の負担増については正面から語られなかった。

衆院選の選挙戦最終日となった13日。甲府市で自民党候補の応援演説に立った安倍晋三首相は「我々はしっかりと子供たちに投資をしていく」と訴え、子育て支援策の充実を約束した。ただ、消費増税を1年半先送りしたことで、低所得者の年金に給付金を上乗せする新制度は延期せざるを得ないことや、選挙後に待ち受ける医療や介護の負担増には一切触れなかった。

毎日新聞が5〜7日の特別世論調査で最も重視する衆院選の争点を尋ねたところ、1位は「年金・医療・介護・子育て」(31%)で、選挙では与野党とも「社会保障の充実」を訴えた。しかし、与党は負担増を説明せず、野党は明確な財源を示さないまま。社会保障は最後まで争点に浮上しなかった。

2009年、民主党政権が誕生した原動力の一つは「消えた年金」問題だった。09年に限らず、暮らしに直結する社会保障は政権の行方を左右してきた。その様相が変わったのは、民主党政権末期の12年6月。同党と自民、公明の3党が、消費税率を10%に引き上げる代わり、増収分はすべて社会保障の充実・安定化に充てることで合意してからだ。この「税と社会保障の一体改革」で手を組んだ3党は、消費増税では互いを攻めにくくなった。

そうした折の首相の増税延期表明に、民主党は揺れた。増税路線を維持するなら政府に社会保障財源を問いただし、改革の遅れを批判できる。だが、他党がそろって増税に慎重な中、民主党だけが選挙戦で負担増を口にすることはできないという判断が働いた。結局は増税凍結に転換し、増税をいつまで延期するかさえ示せなかった。民主党は与党を攻撃する「資格」を失い、社会保障は争点から一層遠ざかった。

政権が低所得者の年金への給付上乗せを見送ったのも、「民主党は批判できない」と見透かしてのことだ。民主党前職の候補は「増税維持で筋を通すべきだったかもしれない」と苦渋の表情を浮かべる。

民主党は公約に政権奪取時と同じ年金改革案を掲げている。とはいえ、既に消費税率を最高17%まで引き上げる必要があることや、党の主張する「分厚い中間層の復活」に反して中堅所得層の年金が減ることが判明し、色あせつつある。9日、東京都内で演説した海江田万里代表は介護保険に時間を割き、年金に関しては「中長期的に考えていく必要がある」と述べただけだった。

少子高齢化で1人の高齢者を支える現役世代の数は、50年前の10・8人から2・5人へと減った。100兆円を超えた社会保障給付費は、10年後には150兆円に膨らむ見通しだ。介護保険の自己負担割合アップ、75歳以上や高収入者の医療保険料増−−。来年度以降、政府は多くの負担増を予定している。

暮らしに直接影響する分野で耳に痛い議論を避ける姿勢は与野党に共通している。今回の衆院選では投票率低下が懸念されているが、関心が低くなるとすれば、政治の側にも責任がある。【吉田啓志】

 ◇与党、経済一点突破 野党、焦点を絞れず

衆院選立候補者や政党の最後のお願いに耳を傾ける有権者たち=東京都千代田区で13日午後7時3分、徳野仁子撮影
衆院選立候補者や政党の最後のお願いに耳を傾ける有権者たち=東京都千代田区で13日午後7時3分、徳野仁子撮影

自民党はアベノミクスによる実績を訴えて経済に集中した。標的を「2年前までの民主党政権」に定め、当時の経済低迷への批判を徹底。前回2012年衆院選で起きた有権者の「民主離れ」を再現しようと狙った。

「円安に課題はあるが、だからといって民主党政権時代の円高に戻っていいはずはない」。安倍晋三首相は13日、山梨県甲州市で改めて民主党政権との違いを聴衆にアピールした。

首相は各地の遊説で時間のほぼ半分を経済に割き、「一点突破」の姿勢を貫いた。2日の第一声で触れなかった集団的自衛権の行使容認については、その後の演説の最後でしばしば言及。「選挙で堂々と訴えた」という体裁を取ったが、いずれも短時間で、外交・安保の話題を省略する場面も目立った。世論が割れる原発問題や、特定秘密保護法には直接言及せず、争点化を避けた。

こうした戦術は奏功しているようだ。報道各社の情勢調査で優位が報じられ、自民党幹部からは予想を超える好感触に「実感がない」という声も漏れる。

これに対し野党は「アベノミクスの失敗」を中心に、経済政策で論戦を挑んだ。民主党の海江田万里代表は13日の街頭演説で「安倍さんは企業が一番活躍しやすい日本を作るが、国民が一番豊かになれる日本を作らなければいけない」と指摘し、アベノミクスで格差が拡大していると批判した。

しかし、アベノミクスの功罪を巡る議論は、首相の土俵で戦うことにほかならない。守勢に回った状況をなかなか変えられない野党側は、終盤にかけて、世論の批判が根強い集団的自衛権や特定秘密保護法、原発再稼働、憲法改正など経済以外の争点を取り上げる頻度を増やした。

あわせて、安倍政権を「一党独裁」(維新・江田憲司共同代表)、「暴走」(共産・志位和夫委員長)と訴えて有権者の警戒感を呼び起こす戦術に出た。ただ、かえって野党の主張が拡散した印象は否めない。【高橋克哉、佐藤慶】

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