衆院選で議席を大きく増やした共産党。党の理論的支柱として「55年体制」下の政治を見つめてきた不破哲三元議長(84)は党の躍進だけでなく、二大政党のありようにも冷静な目を向ける。今回の選挙で9年ぶりに街頭演説に立った不破氏に東京・千駄ケ谷の党本部で聞いた。

――長きにわたって自民党と対決してきた共産党の幹部の目に、いまの自民党はどのように映りますか。

自民党は以前は保守総連合という性格があった。例えば佐藤内閣(1964~72年)の時代、次の内閣を背負う『三角大福中』(三木武夫田中角栄大平正芳福田赳夫中曽根康弘の各氏)という5人の親分衆がいて、それぞれ個性を持っていた」

小選挙区制になって、いわばモノカラー(単一色)になっちゃった。それを率いるのが、安倍晋三さんでしょ。彼の戦争観は、米国や欧州では歴史修正主義として定着している。自民党はそのカラーで統一された。僕は『乗っ取られた』と言うけど、今まで保守総連合でいた野中広務(元官房長官)さんや古賀誠(元幹事長)さんは『今の自民党は何だ』となる」

――原因は小選挙区制

小選挙区制は政治を単純化するね。自民党が強ければ、小選挙区ではだいたい自民党の候補が当選者になる。その候補者は全部、上層部が決めるシステムになっている。小選挙区制は、自民党の上層部にとって都合がいいけれども、自民党の政党としての発展から言うと、やっぱり劣化してるんじゃないかね」

――他の政党はどうでしょう。

「保守二大政党制をつくる作戦(小選挙区制政党助成金)が政党の作り方をすっかり壊してしまった。僕が国会に出た時、社会、公明、民社、共産の各政党が、自分の組織、綱領、政策を持って自民党に相対していた。しかし、二大政党作戦が始まってから政党は綱領も政策もいらない。看板を掲げ政党助成金でやっていこうとなって、政党作りが根本から変わってしまった」

「数えてみると新党が20年で約40できたが、民主と維新などしか残っていない。民主も『野党再編だ』といまだに言っている。自分の立脚点をちゃんと持った政党がなくなった」

――小選挙区制で政党が単色化するなか、官邸主導が強まり、議員の顔が見えなくなっていますね。

小選挙区制は非常に人工的な制度なのね。どこの国の選挙制度にも歴史があって、米国は二大政党制の典型だけれども、奴隷解放戦争で奴隷制の『廃止派』と『維持派』から二大政党になっていった。日本は上から選挙制度を変え、(政党助成金という)金の分配で新しい政党を作った。それが二大政党なんて絵に描いた餅でね。野党にとっても自民党にとっても害悪だった」

――民主党が代表選を行います。

自民党に対決する政策的立場、綱領を持っていない。本当に対決でやろうと思ったら、民主党政権時代を清算しないといけない。それをできずに、引きずったら自民党に対する代案を持てない。第2保守党という枠を突破し、取り払えるだけの力量が、指導者にあるのかが問われている」

――今回の共産党の躍進をどう分析していますか。

「本当の自共対決の時代が始まりつつある。自民党は70~80年代、共産党以外の野党を取り込んで包囲しようとした。それがダメになると、自民党単独政権ではもたないと考え、保守の二大政党制共産党を抑え込もうと、細川護熙政権ができたり、新進党自民党に対抗したりしたけれども、結局つぶれるでしょ。小選挙区比例代表並立制が始まり、自民と民主の本格的な二大政党制だといって、それは強烈な共産党の封じ込めになった。しかし、民主党は破綻(はたん)し、(二大政党の)当事者として見込みがなくなった。その時の共産党の躍進だから、これは新しい自共対決の始まりだと思っていい」

――共産党の勝利と言われますが、民主や維新の自滅という外的な要因による躍進ではありませんか?

安倍政権の間違った政治に正面から反対し、対案を出すのは共産党だけ。共産党は一致できる政策では共闘しようと言っている。沖縄では基地反対の共闘が始まった時、まさか選挙でも共闘するとは誰も考えなかった。しかし、衆院選で1区は共産、2区は社民、3区は生活、4区は元自民党。ちゃんと団結して全員当選を勝ち取ったでしょ。他党を無視するのではなく、共同の努力も進めている」

――それでも共産党の掲げる主義への理解が広がったとは言えないのでは?

「一朝一夕に物事は進まないものだ。1点共闘している全員が衆院選共産党に投票したかというと、そうではない。また、共産党に投票しているけど、(共産党の)全てを理解しているとも言えないわけでしょ。物事は一歩一歩進んでいる。我々は長い目で見て、自信を持っている」

(聞き手 上地一姫、江口達也 編集委員・松下秀雄

ふわ・てつぞう 本名・上田建二郎。1930年、東京都生まれ。東大卒業後、40歳で党書記局長に抜擢(ばってき)され、82年に委員長、00年に議長に就き、約35年間、党を指導した。「柔軟路線」をとり、2000年の規約改正で「前衛政党」「社会主義革命」などの文言を削除。04年綱領改定では象徴天皇制自衛隊存続の容認を主導した。現在、党社会科学研究所所長。

■女性候補・ブラック企業対策・ネット戦略… 無党派層取り込み策奏功

躍進の背景には無党派層の取り込み戦略がある。

まず候補者だ。2013年参院選では、当時30歳の吉良佳子氏を東京選挙区に擁立。「女性」「若さ」を前面にアピールし、同区で12年ぶりの議席を得た。今回の衆院選でも、バンド活動をしていた池内沙織氏(32)が、東京12区で4万4千票を獲得し、比例東京ブロック復活当選した。

政策面でも、労働法規を守らない「ブラック企業」対策など若者に切実な問題を取り上げた。ブラック企業や原発をめぐるデモに吉良氏らを積極的に参加させ、共産支持層を超えた有権者にアピールした。ネット戦略も進め安倍政権の政策に合わせて動物のサイのような「サイかど~」(原発再稼働)といったキャラクターを作成。問題点をわかりやすくあぶり出そうとした。

朝日新聞社による14日の出口調査では、無党派層の16%が比例区の投票先に共産党を選んだ。埼玉大社会調査研究センター長の松本正生教授(政治意識論)は、若者の中に政党へのこだわりがない「そのつど支持」が一定数いると指摘。「共産党への先入観がなく、投票先として選択する範囲の中に入っている」と分析する。

共産党によると、3年前に約38万人まで減った党員数は、今年1月現在、約40万人に増えた。最近では、入党する人の3、4割が40歳未満という。

(上地一姫)

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