2014年12月29日05時00分
《解説》安倍政権が自衛隊による後方支援のための新法を制定するのは、米軍への支援を地球規模に広げる狙いからだ。ただ、公明党は自衛隊の海外での活動範囲や内容を広げることには慎重だ。今後の与党協議では、国会による歯止めをどうするかも焦点となる。▼1面参照
新法制定の背景には、中国の台頭で緊張感が高まる日本周辺の安全保障に米国をつなぎとめたいという政権側の事情がある。世界中に展開する米軍への後方支援に積極的になるかわりに、尖閣諸島の問題などで、米国の関わりを強めてもらおうというのだ。
今後の与党協議のポイントは、米国のニーズに対応してどこまで自衛隊の活動を広げるかだ。
7月の閣議決定では「非戦闘地域」の考え方をなくすなど、自衛隊の海外での後方支援の範囲を拡大した。来年前半に見直す日米防衛協力のための指針(ガイドライン)では、「周辺事態」の考え方もなくす方針だ。周辺事態法の廃止も検討している。自衛隊の活動範囲の制約を少なくし、米軍に協力しやすくするのが狙いだ。一方、公明党は周辺事態法が廃止された場合、自衛隊の活動範囲が一気に広がるおそれがあると懸念する。
さらに防衛省幹部は「支援内容は広いことが望ましい」とも話す。これまで事実上認められなかった武器・弾薬の提供や戦闘準備中の航空機への給油・整備なども加える考えだ。ただ、こうした活動は、自衛隊員が戦闘に巻き込まれるリスクも高まるため、公明党は慎重だ。
もう一つのポイントが、新法で国会が関与する仕組みをどう盛り込むかだ。新法では、国会の承認だけで派遣を可能にする。そこで国会の承認を事前に義務づけるかどうかで、歯止めとしての国会の役割が大きく変わってくる。
事後承認が認められると、政府の判断を追認せざるを得ない状況になる可能性もある。公明党は国会の関与を強めて、実質的に特措法と同じような歯止めをきかせたい考えだ。政府・自民党は、緊急時は事後承認も認めることを検討している。
(今野忍、三輪さち子)
<日米ガイドラインと周辺事態法> 自衛隊と米軍の役割分担について、1997年に朝鮮半島有事などを想定した現在のガイドラインに改定した。これに基づいて99年に、日本周辺での有事の際に米軍への後方支援を可能とする周辺事態法が成立した。来年前半をめどに再改定するガイドラインでは、地球規模で日米の防衛協力を進める方針を盛り込む予定。