社説:経済対策 必要性も効果も疑問だ

毎日新聞 2014年12月30日 東京朝刊

 安倍内閣が総額3・5兆円規模の経済対策を閣議決定した。個人消費を喚起したり地方の活性化を促したりするのが狙いだという。

しかし、そのメニューには場当たり的な事業が並び、アベノミクスが目指す成長戦略にどれだけ役立つのか疑問が募る。財政が悪化し続けている中で巨額の税金を使うからには、政府はその必要性と効果をしっかり説明する責任がある。

経済対策はもともと、2015年10月に消費税率を10%に引き上げるという前提で検討されていた。再増税に耐えられるよう、日本経済を底上げしておくという趣旨だったはずだ。ところが再増税が見送られたにもかかわらず、経済対策は当初想定していた2兆円程度から大幅に増額して実施されることになった。

財源には企業業績の回復で税収が当初予想以上に増える分などを充て、赤字国債は発行しない。財政再建にも配慮しているように見える。

しかし経済対策は本来、景気が大きく落ち込んだ場合に緊急的に実施するものだ。税収が増える情勢にもかかわらず、大幅に増額して実施する必要があるのか。税収が増えた分、赤字国債の発行額を減らせば将来の国民負担を軽くできる。あえて経済対策にまわす理由を納得いくよう説明すべきだ。

アベノミクスの恩恵は一部の大手企業や富裕層に限られ、国民各層には行き渡っていない。中小企業が多い地方、賃金が上がらない消費者はむしろ、円安による原材料や消費財の高騰で打撃を受けている。今回の対策は、その穴埋めを図ろうという発想のようだ。

経済成長を持続させるには企業の投資を促し、利益をさらなる投資や賃金に振り向け、消費拡大につなげることで好循環を生む必要がある。経済対策の役割はその起爆剤になることだが、今回はその役割にそぐわない内容が目立つ。

対策の目玉とされる地方のための交付金は、特産品の購入を促す商品券や低所得者向けの燃料費補助などが中心だ。4月の消費増税で失速した住宅市場のテコ入れ策として、省エネ対応の住宅を新・改築した場合、金券や商品に交換できる「住宅エコポイント」を付与する制度の復活も盛り込まれた。

それらの効果は補助金やポイントを使う1回限りにとどまり、持続するものではない。地方中心に手っ取り早く個人消費を増やし、国内総生産(GDP)をかさ上げするためのバラマキという印象はぬぐえない。

財政出動すればその分、GDPは伸びる。しかし、それは国民経済の実力とはいえない。アベノミクスの目指すところでもあるまい。

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