消費増税の税収を財源にする「社会保障の充実策」は、新年度に計画していた事業の一部が凍結、縮小された。10月に実施予定だった税率10%への再増税が先送りされた影響だ。安倍晋三首相が旗を振る子育て支援などが優先され、年金・介護分野で低所得の高齢者がしわ寄せを受けた形となった。

■子育て支援充実は実施

消費税率の5%から10%への段階的引き上げで増える税収は社会保障に回り、借金で賄っていた分の穴埋めとサービスの充実に使われる。新年度の充実策の財源について政府は、地方分を含め1兆8千億円強と見込んでいた。再増税の先送りで約1兆3600億円分の事業に絞り込まれた。

目減りした財源の配分で最優先されたのが「子育て世代」への施策だ。安倍首相は昨年末の衆院選でも、待機児童の解消を強調してきた。4月から始まる「子ども・子育て支援新制度」のための予算は「満額回答」。塩崎恭久厚生労働相は13日の会見で「繰り返し総理からお約束していたわけで、優先すべき施策として対応が十分できた」と話した。

新制度では保育施設への補助を手厚くする。さらに、1人の保育士が担当する子どもの数を減らしたり、保育士らの給与アップも図ったりする。

医療分野の事業も、すべて盛り込まれた。自営業者や元会社員らが入り、赤字に苦しむ国民健康保険への支援拡充は、「医療保険制度改革の要」(厚労省幹部)として認められた。

■介護の低所得対策、縮小

介護分野は事業によって結果がわかれた。国家戦略として取り組む認知症対策や、介護職員の給料アップ策に力点が置かれた。

認知症は、2025年に65歳以上の5人に1人にあたる700万人前後に増えると推計されている。医療・介護の専門職らが訪問して支援する「初期集中支援チーム」の数を100カ所から316カ所に増やす。人手不足が深刻な介護職員については、介護サービスの公定価格「介護報酬」全体をマイナス改定するなかでも、待遇改善を促す加算は上積み。月1万2千円相当の給料アップにつながるようにした。

一方、所得が低い65歳以上の高齢者を対象とした介護保険料の軽減策は、大幅に縮小された。いまの制度は低所得者の保険料を50~25%軽減する仕組みがあるが、最も所得の低いグループでは軽減率を70%に拡大するはずだった。これを55%にとどめた。その結果、軽減対象者は1100万人から650万人に減少。軽減額も1人当たりの平均額で月約1千円から約280円になった。

年金では、無年金・低年金対策の実施が先送りされた。一つは所得が少ない受給者に基本月5千円を支給する給付金だ。約790万人が対象と見込んでいた。もう一つが、年金を受け取るのに必要な保険料支払いの期間を25年から10年に短縮する施策だ。無年金の人を減らす狙いだった。

縮小や先送りされたこの三つの施策について、厚労省は、いずれも消費税率が10%に引き上げられる17年4月からすべて実施するとしている。(田中孝文、中村靖三郎)