毎日新聞 2015年02月07日 東京朝刊
政府が、2030年時点での「最適な電源構成(エネルギーミックス)」について検討を始めた。全発電量に占める原子力や再生可能エネルギーなどの割合について目標を設ける。
数値目標を定めるのは東京電力福島第1原発の事故後、初めて。原発への依存度が最大の焦点になる。事故の教訓を踏まえ、将来世代にも責任を持てる構成を目指してほしい。
電源構成は年末の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向けた温室効果ガス削減目標の前提になる。政府は経済産業省の有識者会議の議論を踏まえ、6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)までに決める考えだ。
政府は昨年4月に閣議決定したエネルギー基本計画で原発について、事故前に約3割だった依存度を「可能な限り低減する」とする一方、「重要なベースロード電源」と位置づけた。これでは電力会社や参入業者は、中長期的にどんな発電設備に投資すべきか決められない。
電源構成の検討に当たって政府は経済性や環境性、供給安定性、安全性を追求するという。実際、電気料金は燃料費のかさむ火力が発電量の9割を占めているため、原発事故前より2〜3割上がった。国内の二酸化炭素(CO2)の排出量は過去最大を更新し、先進国で最低水準のエネルギー自給率は一段と下がった。
いずれもないがしろにできない問題だ。しかし、肝心なのは安全性の確保である。そこを議論の出発点にしてほしい。「安全神話」が崩壊した原発への依存はできるだけ早くやめる必要がある。
ところが政府は、原発依存度を15〜25%に設定する考えらしい。経産省では、国際的に高い評価を得られるCO2削減目標を掲げるためには原発依存度を2割以上にする必要があるという意見も出ている。
原発運転を40年に制限するルールを守ると30年時点での依存度は15%程度になる。それ以上に増やすには運転期間延長や原発建て替えが必要で、脱原発に逆行することになる。そうならないために、省エネや再生エネの検討を優先すべきだ。
省エネで電力需要を減らせば、CO2排出など発電に伴う問題は、その分だけ解消される。産業界での一段の省エネに加え、LED照明への切り替えや高効率家電の導入、住宅の断熱性向上などを家庭に促す政策支援も必要になるだろう。
発電コストが高く、発電量が不安定な再生エネも技術開発や送電網の運用改善などで拡大の余地は広がるはずだ。まず原発ありきでは、事故を踏まえた課題を克服するための議論にならない。
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コメント:安全第一なら今のまま電力は十分だから原発を再稼動しないことだ。