毎日新聞 2015年02月23日 17時34分(最終更新 02月23日 22時37分)
◇第3次安倍内閣での閣僚辞任は初めて
西川公也農相(72)は23日、首相官邸で安倍晋三首相と会談し、自身の献金問題が国政に影響するのは避けたいとして辞表を提出した。首相は受理し、後任に林芳正前農相(54)の起用を決定。林氏は同日、皇居での認証式を経て正式就任した。第3次安倍内閣での閣僚辞任は初めて。西川氏は重要課題の農協改革を担当しており、政権に打撃が広がりそうだ。
首相は辞表受理後、首相官邸で記者団に「職を全うしていただきたかったが、本人の辞任の意思は固かった。任命責任は私にあり、国民におわび申し上げたい」と陳謝。農協改革や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉など山積する課題について、「林氏は十分政策や現状には精通しており、まったく遅滞はない」と政権運営への影響を否定した。
西川氏が代表を務める政党支部は、国の補助金を受ける会社から2012年に政治資金規正法違反の疑いが強い300万円の献金を受けていたことが発覚した。また、自民党がTPP交渉の「重要5項目」として関税維持を目指す砂糖メーカーの団体の関連企業による100万円の献金も判明。西川氏は「違法性の認識はなかった」と釈明したが、「疑問を持たれないようにする」との理由で返金していた。
西川氏は辞表提出後、記者団に「(衆院予算委の)基本的質疑が終わり、私がいくら説明しても分からない人は分からないということで、辞表を出した」と説明。一連の献金問題について「法律に触れることは全くない」と繰り返したが、「これから農政改革をやる時に内閣に迷惑をかけてはいけないということで辞表を出した」と述べた。
一方、林氏は農相就任後に記者会見し、「行政の継続という意味で首相から指名を受けたので、切れ目が生じないように全力で頑張っていきたい」と述べた。
安倍内閣を巡っては、昨年9月の第2次内閣の改造後に「政治とカネ」の問題が噴出。同年10月に小渕優子前経済産業相と松島みどり前法相が「ダブル辞任」したばかりだ。野党は西川氏の献金問題の全容解明に加えて、首相の任命責任を追及する構えで、15年度予算案の審議に影響が出る可能性もある。【松本晃】
◇西川公也農相の献金問題
西川氏の政党支部「自民党栃木県第2選挙区支部」は2012年9月、4カ月前に国から7億円の補助金交付が決まった栃木県鹿沼市の木材加工会社から300万円の献金を受領。補助金交付決定から1年間の献金を禁じた政治資金規正法違反の疑いがある。この問題に絡み西川氏は09年8月の衆院選で落選後、同社の顧問を務め、顧問料を受け取っていたことを、今月23日の衆院予算委員会で明らかにした。
また、同支部は13年7月、砂糖メーカーの業界団体で4カ月前に国から13億円の補助金交付が決まった「精糖工業会」の関連会社「精糖工業会館」から100万円の献金を受けた。工業会と会館はトップや役員、所在地が同じ。「一体的な運営で脱法的」と指摘された。さらに献金の時期は、砂糖を含む「重要5項目」を関税撤廃の例外とするよう求める環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉に日本が初参加する直前で、利害関係のある業界からの献金の是非も問われた。