“政界のウラ”を読む:(7)安倍政治 長期政権に向け矛盾はらむ2大「脱却」

2015年02月27日

衆院本会議で施政方針演説をする安倍晋三首相=国会内で2015年2月12日
衆院本会議で施政方針演説をする安倍晋三首相=国会内で2015年2月12日

 

 ◇再編に消極的な野党 遅れる対抗勢力の結集

安倍晋三首相の1強時代が続いている。周辺からは「2020年の次期東京オリンピックも安倍政権で」と、戦後最長政権説まで流れてくる。総裁選を争った石破茂地方創生担当相も谷垣禎一幹事長も、党内での存在感は薄い。他方、民主党も岡田克也代表が誕生したが、野党再編には消極的で、対抗勢力の結集は依然、闇の中のままだ。

安倍政治の特徴は二つの「脱却」にある。「戦後レジームからの脱却」と「デフレからの脱却」だ。読売の2月の調査で、景気回復の実感を問うと「実感していない」が79%と、「している」の16%を圧倒している。だが、安倍政権の政策全般を聞くと、「評価する」(46%)が、「評価しない」(42%)を上回っている。アベノミクスの成否のカギを握る「第三の矢」として、注目される岩盤規制の一つとして、安倍が着手した農協改革には、読売の調査では「賛成」(40%)が「反対」(32%)を、凌駕(りょうが)している。

ところが、「戦後レジームからの脱却」では世論の反応は総じて厳しい。朝日新聞の2月の調査では、植民地支配や侵略でアジアの人々に大きな苦しみを与えたとして「痛切な反省」「心からのおわび」を入れた戦後50年の「村山富市首相談話」、60年の「小泉純一郎首相談話」の評価を聞いた。「評価する」(62%)が、「評価しない」(20%)を大きく上回っているだけでなく、戦後70年の今年の「安倍談話」にも、これらの言葉を採用すべきか否かを聞いたところ朝日では「入れるべきだ」(52%)が、「その必要はない」(31%)を超えている。読売の調査でも、「使うべきだ」(44%)が「そうは思わない」(34%)を上回っている。

過去の二つの談話には、「植民地支配と侵略によって」「とりわけアジア諸国の人々に対し、多大の損害と苦痛を与えた」「改めて痛切な反省の意を表し、心からのお詫(わ)びの気持ちを表明する」と、同じ表現が使われている。

その一方で、安倍は「今まで重ねてきた文言を使うかどうかではなく、安倍政権としてこの70年をどう考えているという観点から出したい」と、文言の踏襲にはこだわっていない様子だ。にもかかわらず、自民党内からはほとんど異議、異論が聞こえてこない。唱えているのは大抵、長老グループのメンバーばかりだ。

筆者が毎日新聞の「ずばり聞きます」(15年2月24日夕刊)でインタビューした福田康夫元首相は、「靖国神社そのものを否定することはないが、(戦没者の)追悼が中心の施設。平和な将来を祈るならば、別の場所がいい」と、靖国神社参拝に固執する安倍をけん制した。福田は小泉政権下で、官房長官を務めていた当時、設置した私的懇談会では「国立追悼施設が必要」との提言をまとめた。同じインタビューで、「いまだにその考えは生きている」とも、述べていた。

福田は何度も中国を訪問、習近平主席などとも会談、日中首脳会談の開催に向け、環境整備に努めている。戦後70年の節目の年の今夏に出される「安倍談話」についても、福田は「過去の反省、戦後の歩みの評価、未来への展望の3点が必要。過去の反省なくしては、戦後の評価もしにくいし、重みがなくなる」と、注文を付けた。

さらに、「過去の首相談話をころころ変えるようでは国家として信頼されない」とも語っている。

 ◇自民党内で続く「物言えば唇寒し」状況

外交・安全保障政策が得意の山崎拓元副総裁は、福岡市内の講演で安倍が掲げる「積極的平和主義」を「平和を構築するため時に場合によっては、武力行使を行うという考え方なら反対だ」「世界平和のためとの名目なら世界中の紛争地域に介入することになる」と、批判する。

こうした異論は、まだまだごく限られている。「『物言えば唇寒し』状況が続いている」と、山崎は形容する。小選挙区制の導入で派閥は減退したが、執行部の権限が増大したことも大きな要因だろう。安倍は参院本会議で、「原発の再稼働にはどの世論調査でも、国民の過半数は反対していることをどう考えるか」と質問されると、「世論調査だけを見て安易に原発ゼロというわけにはいかない」と答えていたが、高い内閣支持が、安倍内閣の生命線になっているのが実態だろう。

2月の読売の調査では、支持率は前回よりも5ポイント上昇し58%に。不支持率も4ポイント下がって34%だった。2月中旬の朝日新聞の調査でも傾向は同じで、支持率は8ポイント上昇し50%。一方、不支持率は6ポイント下落して31%になった。

高い内閣支持率を獲得できる要因の一つとして考えられるのは、55年体制下では自民党の固い支持基盤の一つだった農協の改革に着手した点があげられる。だが、金城湯池だった農協のような組織にメスを入れるとしたら、自民党固定支持層から離反する可能性も否定できない。

中曽根康弘首相時の「行政改革」でも、小泉純一郎首相時の「郵政改革」でも、こうしたリスクをタレント性豊かな党首力で「無党派層」を取り込み、改革に反発し、離反した分をカバーしてきた。今回の朝日の政党支持調査でも、自民党支持は7ポイント上昇し40%に達したが、「支持政党なし」は3ポイント減、35%に下落しているのも、こうした政党支持構造を端的に示しているといえる。「デフレからの脱却」を目指す改革が、過去と同じような効果を生じさせている点は括目(かつもく)すべきだが、タカ派路線が鮮明な「戦後レジームからの脱却」とは矛盾点が少なくない。保守の安倍政権の改革路線に民主党など野党が対抗するには、さらなる改革路線と、こうした基本的な矛盾点を突くことが必要だ。(敬称略)

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