安保法制:自公合意 覚悟なき危うさ=政治部長・末次省三

毎日新聞 2015年03月21日 東京朝刊

 過去に何度か記事にも引用してきた幹部自衛官の言葉がある。

「純粋に法的側面から言うなら、われわれは『調査・研究』と『武器等防護』で大概のことができると考えている」

16年前の発言だ。国会では日米防衛協力指針(ガイドライン)関連法の審議が行われており、どこまで対米支援が可能かが焦点となっていた。

防衛省設置法は4条で33の所掌事務を規定、18番目には「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」とあり、調査・研究名目での部隊移動などができる。自衛隊法95条は、武器、船舶、航空機、通信設備などを守るための必要最小限度の武器使用を認めている。

幹部自衛官は、この二つを組み合わせて拡大解釈をすれば、地球の裏側でも自衛隊はかなりのことができると指摘したのだが、一方で「天下の暴論ではある」とも語っていた。与党が新たな安全保障法制の合意をした今、法の拡大解釈ではなく法整備という体裁を取る形によってではあるものの、現実が「天下の暴論」に近づいた。

端的に言えば、自衛隊が「普通の軍隊」に近づく。自衛官が海外で命を失ったり、外国人の命を奪ったりする可能性が高まる。戦後一度も経験したことのない事態だ。果たして、その覚悟が今の日本国民にできているだろうか。

毎日新聞が14、15両日に実施した世論調査では、安全保障法制を今国会で成立させることに対し、反対が52%で、賛成の34%を大きく上回った。個々の自衛官にも「あなたはどう考えていますか」と問いかけてみたい。国民の意向を踏まえない政治決定を簡単に認めるわけにはいかない。

そもそも「国際社会の平和と安全」「日米関係の安定」に向け、日本が何をすべきかを考えた時、今回の法整備に最優先で取り組まなければならないのだろうか。「日本の果たすべき別の道」を探るような議論なく、結論ありきかのように進んでしまったことに危うさを覚える。

与党からは「安全保障論に基づく法的な検討は十分にやった」との声が聞かれる。仮にそうだとしても、やはり「拙速に『国のかたち』を変えてはならない」という思いは消えない。

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