安全保障法制を、できるだけやさしく伝えるシリーズ。今回は、むやみに自衛隊が海外に派遣されることを防ぐ「歯止め」について、二つの問いで考えます。国民の意思を政治に反映させる国会と、国際社会のルールに沿って平和を守る国際連合の役割を読み解きます。

【Q11】派遣、国民の意見が反映される仕組みは?

◇国会がチェックし事前に承認

Q 自衛隊が派遣される機会が増えそうだけど、私たち国民の意見は反映されないの?

A 国会の働きがポイントになる。時の内閣が派遣すべきだと判断しても、国民が選んだ国会議員が賛成多数で認めなければ、派遣はできない。それを国会の承認と言う。

Q 詳しく教えて。

A 例えば、日本が他の国に直接攻撃されたら、国を守るために、首相は自衛隊に防衛出動を命令する。その際も、国会の承認を出動前に得るのが「原則」だ。朝鮮半島での戦争などで「周辺事態法」を使って自衛隊が米軍を手伝う時も「原則」として国会の事前承認がいる。政府はこの法律を変えて派遣の機会を増やす方針だが、事前承認のルールは変わらない。

Q 「原則」ということは、例外もあるの?

A ある。いきなり戦争が始まる場合なんかは「緊急時」なので、事後承認も認められている。こうした場合、内閣の判断で自衛隊を動かしても国会の事後承認が得られなければ、引き返すことになる。

Q 国連平和維持活動(PKO)で派遣する時も同じルールなの?

A PKOのうち、停戦監視など軍事的な任務を行う国連平和維持軍(PKF)に参加する場合は事前承認がいる。また、過去にアフガニスタンやイラクでの戦争で自衛隊を派遣した時は、期限や活動内容を限った特別措置法をその都度作った。ケースを特定した特措法の審議が、国会承認と同じチェック機能を果たしていたとも言えるね。

Q でも今度は、一回限りの特措法でなくて「恒久法」を作るんだよね。

A そう。政府が恒久法を作る理由の一つに、国会承認の問題があるんだ。海外で戦争が起きてから、それに応じた特措法を作るのは「国会審議などで時間がかかり過ぎる」と考えている。あらかじめ恒久法を作っておけば、他国軍を手伝うために、いちいち特措法を作らなくても自衛隊を派遣できるという理屈だ。

Q 恒久法では、国会の事前承認はどうなるの?

A 3月の与党合意では「国会の事前承認を基本とする」と決められたよ。

Q 「基本」って、またあいまいな言葉だね。そもそも何を承認するの?

A 政府は自衛隊の派遣理由や現地での活動内容を書いた基本計画を示し、国会の承認を求めることになる。「事前を基本」としたのは、政府や自民党は恒久法でも事後承認を認める余地を残そうとしたようだ。一方、公明党は「例外なしの事前承認」を主張し、議論は決着していない。

Q ほかに課題は?

A これまで議論されたのは派遣する際の国会承認についてだ。その後の活動を国会がどうチェックするかは決まっていない。これも見逃せない点だね。

【Q12】海外の戦争やテロ対応、国際貢献に関わる基準は?

国連安保理決議などが条件

Q 海外での戦争で自衛隊が他国軍を手伝うって言うけど、そもそも手伝っていい戦争なんてあるの?

A カギになるのは国際連合(国連)の存在だ。戦争や紛争、テロ攻撃が起きた時、その対応策を話し合うのが国連安全保障理事会だ。任期のない米、英、仏、中、ロの常任理事国と、2年交代の非常任理事国(10カ国)の計15カ国で構成されているよ。

Q でも、各国の意見が対立することもあるよね。

A そう。だから安保理の重要な決定は「決議」によって多数決で決まる。決議が採択されるためには、(1)うち9カ国が賛成(2)強い権限をもつ常任理事国が1カ国でも反対したら成立しない――のがルールだ。

Q 安保理決議自衛隊の派遣が関係あるの?

A これまでに海外派遣された際も、安保理決議が政府の判断材料の一つになってきた。2001年の米同時多発テロでは、安保理はテロ攻撃を非難したり、加盟国がテロの脅威と戦う必要性を認めたりした複数の決議を採択した。米国などはこれを根拠にアフガニスタンを攻撃。日本も一連の決議を踏まえ、テロ対策特別措置法を作って自衛艦をインド洋に派遣し、米軍支援などに当たったんだ。

Q 決議で非難された国を懲らしめる戦争なら、日本も手伝っていいということなの?

A そう簡単には言えないよ。03年のイラク戦争の前、イラクが毒ガスなどの大量破壊兵器を持っているとして、安保理は国連機関による査察(調査)などを要求する決議を出した。イラクへの攻撃を直接認めるような決議は出ていなかったけど、米・英両国などは見切り発車で戦争を始めた。仏、独、ロ、中などは攻撃に強く反対したけど、日本は米国に同調してイラク特措法を作り、自衛隊を派遣。現地で人道復興や物資輸送などの支援活動に当たらせた。

Q 今回の法律見直しで決議の扱いはどうなるの?

A 政府は、他国軍の戦争を後方で手伝う恒久法では、国連決議に基づく活動か、「関連する決議」があることを派遣の条件にしている。また、戦争後に「国際的な平和協力活動」をする際にも、国連決議か「関連決議等」があることを条件にすると言っているよ。

Q 「関連」や「等」とかついているけど、これも例外があるのかな?

A さっきも言ったように安保理決議も内容は様々。政府は「安保理が機能しない時もある」として、派遣条件となる決議の内容や幅をより広くしたい考えだ。また、「国連決議等」としたのは、欧州連合(EU)のような国連以外の組織が、自衛隊の派遣を要請してきた場合などを想定しているようだ。

Q 結局、多くの国が反対したイラク戦争のような場合もまた派遣する?

A このままだと、そうなりかねないね。今後の与党協議でも注目すべきテーマの一つだ。

(池尻和生、上地一姫)