<以下、転送>
第1~13陣原告のみなさまへ
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【第12回裁判のご報告2】更新弁論のつづきです。
3)新規制基準に関する弁論 吉田星一弁護士
新規制基準は操業のための基準に過ぎず安全のための基準ではないこと
1 私たちがこの訴訟において一貫して強調してきたこと,それは,新規制基準
は操業のための基準に過ぎず安全のための基準ではないということです。私たち
はこのことを準備書面12及び17において主張してきました。
2 そもそも国が定める基準とはどういうものなのでしょうか。その答えはこれ
までの公害の歴史が教えてくれています。チッソが当時の水道法による水銀の基
準を満たしていたにも関わらず水俣病が発生したということもその一例です。国
の基準を守っていても被害は発生するのです。
3 このことは当然ながら原発についてもあてはまります。
3.11事故以前,国が定めた「安全基準」なるものによって,原発の「安全神
話」が構築されてきました。そして,過去の原発訴訟において,裁判所もこれを
追認してきました。
しかし,3.11事故が発生し,「安全神話」は神話に過ぎなかったことが明ら
かになりました。事故によって,「安全基準」とは,原発の安全性を担保するも
のではなく,原発を操業するために策定された,『ためにする基準』に過ぎなか
ったということが実証されてしまったのです。
4 3.11事故を受けて,国は従前の「安全基準」を見直し,新たに「新規制
基準」というものを策定しました。そして今,この「新規制基準」に適合する原
発を再稼働させようとしています。玄海原発も当然それに含まれています。
しかし,新規制基準には数多くの問題点が存在しています。それらの個別の問題
点についてここでは触れませんが,「新規制基準」も従前の「安全基準」と同様
に,原発再稼働を目的とした『ためにする基準』に過ぎないのです。
そのような『ためにする基準』にすぎない「新規制基準」では,到底,原発の安
全性を担保することはできません。
新規制基準が原発の安全性を担保するものではないことは,原子力規制委員会の
田中俊一委員長も認めています。たとえば,2013年(平成25年)4月3日
の定例会において,田中委員長はこう述べました。「安全基準だと,基準さえ満
たせば安全だという誤解を呼ぶ」と。基準を策定する国自身が,『ためにする基
準』であることを認めているのです。
そもそも,3.11事故の原因も明確になっていない状況で,事故を教訓にした
原発稼働の基準など,到底作成できるわけがありません。ですから,どのように
考えたところで,「新規制基準」が不十分なものとなることは自明の理であると
さえ言えます。
「新規制基準」は,その名称・内容に変更こそあるものの,国策としての原発を
再稼働するための基準そのものなのです。
5 これまでの原発差止訴訟では,原発の安全性の立証は,第1次的には,「国
の定める安全基準を充足していることを立証すれば足りる」とされ,最終的に原
告側にとてつもなく高い立証責任が課されてきました。
しかし,3.11事故が発生したことによって,国の定める安全基準を充足して
いることを立証すれば足りるという理論が誤りであったことが明らかになったの
です。
このことを踏まえると,本訴訟において被告九州電力が同基準に合致することを
主張・立証したとしても何の意味もなく,新規制基準とは無関係に,本件原発施
設が安全であることが立証されない限り,その稼働は当然差し止められるべきで
す。
6 以上述べましたとおり,新規制基準には多数の問題点があり,『ためにする
基準』に過ぎません。そして,ひとたび事故が発生すれば,取り返しのつかない
被害が発生します。
このような基準では,原発の安全性ひいては国民の人格権は到底担保されないの
であり,かかる基準に基づく操業は絶対に認められるべきではありません。以上
4)避難計画が杜撰であること 稲村蓉子弁護士
1 私たちは準備書面22で、現在つくられている原発事故避難計画では原発再
稼働は到底認められないことを主張しました。この更新弁論で改めて説明します。
2 そもそも、なぜ、この訴訟で、原発事故時の避難計画が争点となるのか。
それは、新規制基準では原発の過酷事故を防げないからです。福島第一原発事故
を経た今、原発に絶対の安全がないことが明らかとなりました。今では国も電力
会社も原発に絶対の安全があるとは決して言わず、新規制基準でも、過酷事故が
起こり得ることが前提とされています。
過酷事故が起きたとき、放出される放射性物質を完全に抑え込む術はなく、残念
ながら、周辺住民は逃げるしかありません。逃げることが、原発事故に対する住
民防護の最後の砦となります。逆に言えば、最後の防護手段である避難ができな
いのであれば、原発事故時に住民を守れないということです。原発事故時の避難
計画は、原発施設のハード面に対する安全対策と同等の重要性をもちます。した
がって、原発施設のハード面の安全対策が万全でないときに原発稼働が許されな
いのと同様、避難計画に実効性がなければ原発稼働は許されません。
平成25年6月、国は、原発事故時の避難計画を作成するための指針(原子力災
害対策指針)を策定しました。現在、この指針に基づき、原発立地自治体、その
周辺自治体において避難計画の策定、その計画に基づいた諸施策の実施が進んで
います。
しかし、これから述べるとおり、現在つくられている避難計画では住民は安全に
避難することができません。
3 現在の避難計画の問題点を考えるにあたって、私たちはどのような物の考え
方をすべきでしょうか。
⑴ 避難計画を考えるにあたって私たちが何よりも参考にすべきは、机の上でさ
れたシミュレーションなどではなく、実際に生じた福島第一原発事故です。福島
第一原発事故で生じた被害を明らかにし、その被害を防ぐにはどのような計画を
作成すべきかを逆算して考えなければなりません。
私たちは準備書面22で福島第一原発事故によって生じた被害を、「避難」とい
う観点から詳細に論じました。被害を直視することは、すなわち、「避難」のあ
り方を考えることだからです。
⑵ ここで、ごく簡単に、福島第一原発事故で生じた被害を、事故発生直後、
避難生活中、避難生活終了時の段階に分けて述べ、どのような避難計画が必要と
されるかを述べます。
ア 事故発生直後、住民は正しい情報もないまま着の身着のまま避難を開始しま
した。医療関係の書類を持ち出せなかったために、後に体調を悪化させる人もい
ました。避難途中、道路では大渋滞が起こり、普段なら20分で行ける道が5時
間かかりました。国が場当たり的に避難範囲を拡大したため、住民はその度に避
難を繰り返さなければならず、福島第一、第二原発に近い町の住民の70%前後
が4回以上の避難を強いられました。住民は、この間、精神的にも身体的にも疲
れ果て、被ばくしました。
福島第一原発から20km圏内にあった病院、介護老人保健施設では、避難途中で、
患者や入所者が次々に亡くなりました。国会事故調査委員会によれば、平成23
年3月末までに、少なくとも60人の方が亡くなっています。原発事故さえなけ
れば、永らえた命です。
原発事故による混乱は、多くの方々の命を奪いました。
イ 次に、避難生活中に生じた被害を見ます。
福島では、事故からまる4年が経っても、多くの方々が避難生活を続けています。
福島県からの県外避難者だけをみても、平成26年3月時点で約4万7000人
が避難しています。原発事故による長期避難生活は、住民に重い負担を課してい
ます。家族は分断され、地域で培われてきたコミュニティも失われました。住民
の多くが生業や生きがいを失い、心身の健康も蝕まれています。例えば、双葉町
で200年以上農家を営んできた舘林てる子さん(78歳)は、事故後、いわき
市のアパートに避難しました。てる子さんは、事故前までは毎日田畑に出て草取
りをしていましたが、避難後、急速に足腰が弱り、一人で階段を上ることすらで
きなくなりました。
平成26年3月末時点で、福島県の震災関連死の死者数は1704名に上ります。
この中には、自死した者13名も含んでいます。残念ながら、原状では、避難生
活が続く限り、この被害は拡大していくのでしょう。
ウ 帰還する場合にも被害が生じます。
現在、国は、一部地域について、帰還政策をとっています。
しかし、原発事故によって近隣自治体とのあらゆる共存関係が断たれたこと、放
射線被ばくへの不安が払拭できないために、帰還は進んでいません。例えば、平
成24年1月末に帰村宣言を発した川内村は、10歳未満の帰村率が10%程度
に過ぎず、高齢化率は事故前の2倍にものぼってしまいました。他の市町村でも
同様の事態が生じています。原発事故でコミュニティや人とのつながりはほとん
ど失われてしまいました。
4 以上述べたとおり、福島第一原発事故の経験からすれば、避難計画は、事故
直後に住民を安全に逃がし、混乱による被害を防ぐことはもちろん、長期にわた
る避難生活の負担を取り除き、汚染されたふるさとの原状回復を行うものでなけ
ればなりません。
しかし、現在つくられている避難計画は、そのようなものになっていません。
例えば、国は、避難範囲を30km圏内に限定していますが、狭すぎます。福島
第一原発事故時、国は、250km圏内の避難まで検討したのですから、避難計
画をつくる範囲は250km圏まで想定すべきことは明らかです。福島第一原発
事故で実際に避難を余儀なくされた範囲をみても、原発から50km離れた飯舘
村が汚染され、村民は帰村できなくなりました。現実から目を背け、30km圏
内の避難でいいとする国の指針が誤っていることは明らかです。福島第一原発事
故時、住民が複数回やみくもに避難させられ、重大な被害が生じたことの教訓が
全く生かされていません。
さらに、原発事故は住民に長期避難生活を強いますが、長期避難への対策はほと
んど定められておらず、ふるさとの原状回復に不可欠な、放射性廃棄物の処分・
管理方法も定められていません。他にも、事故時に被ばくした者への医療の提供
についても、体制が不十分であると国会事故調査委員会で指摘されていたのに、
解決されていません。
市町村レベルで作成されている避難計画をみても、長期避難計画はもとより、事
故直後の避難のレベルでさえ、十分な情報伝達手段が確保できていない、自家用
車で確実に避難できる保証がない、高齢者や病者などの要援護者の避難手段が確
保できていない、避難受入れ地域となる自治体が受入れのための物資や人員を確
保できていない、30キロメートル圏外の地域の避難が必要になった際の避難計
画がない、など多くの問題を抱えています。
結局のところ、現在の避難計画では、住民は事故直後ですら安全に避難すること
ができません。福島第一原発事故時の被害が再び発生することは明らかです。
5 最後に、現在の避難計画が、国際基準も満たしていないことを述べます。
国際原子力機関IAEAは、原発の安全対策はそれぞれ独立した5層の防護によ
って行うこと(深層防護)とし、その5層目の防護は、発電所外での緊急時対応
を準備しておくこと、すなわち実効性のある避難計画をプラント建設前に策定し
ておかねばならないとしています。
この国際基準に基づき、アメリカでは、放射能が放出される緊急事故時に十分な
防護措置が取られる保証があるとNRC(日本の原子力規制委員会にあたる組織)
が判断しなければ、原発の運転許可も建設許可も認められません。実際、アメリ
カのショーラム原子力発電所は、自治体や住民が同意できる緊急時避難計画を策
定できず、商業運転を行う前に廃炉となりました。
安倍首相は「日本の原発の安全基準は世界一」と言いましたが、日本の原発は国
際基準すら満たしていないのです。
6 現在の原発避難計画は、長期避難生活から生じる被害どころか、事故直後に
生じる被害すらも防ぐことができません。国際基準も満たしません。むしろ加害
性をもった計画であるとすらいえます。
住民を放射性物質から守るための防護の砦の1つが崩れている以上、原発の稼働
は許されません。以上
■九州玄海訴訟今後の予定■
第14陣提訴6月11日(木)
第13回期日7月10日(金)
第14回期日10月9日(金)
★原告を広げてください★現在、原告数は9180名です。前回の提訴から1か月
以上たちますが、あまり増えていません。6月の九州電力株主総会までに1万人
の原告団にしたいと考えています。ぜひ、周りの方に広げてください。
【地域原告団イベントのご案内】各地域原告団のイベントはホームページにも掲
載しています→
◆映画「日本と原発」上映会
http://no-genpatsu.main.jp/news/index.php/view/224
☆5月15日(金)18時~ 参加費500円
子どもの舘 子どもホール(八幡西区黒崎 コムシティ6F)
☆5月16日(土)13時~ 参加費500円
男女共同参画センタームーブ 大セミナールーム(小倉北区大手町11-4 5F)
主催:九州玄海訴訟北九州地域原告団・さよなら原発!北九州連絡会
連絡先:北九州第一法律事務所 TEL 093-571-4688
◆映画「みえない雲」上映会
http://no-genpatsu.main.jp/news/index.php/view/225
日 時:5月16日(土)午後1時~3時
場 所:クリエイト篠栗大会議室(福岡県糟屋郡篠栗町尾中47-1)
資料代:大人300円
主 催:エネルギー文明の歩みを考える会
後 援:篠栗町教育委員会
連絡先:弁護士法人奔流(弁護士・池永修)電話092-642-8525 栗山次郎 電話
092-947-8050
◆仮処分学習会(仮)
福岡地区でも仮処分の学習会を行います。ぜひご参加ください。詳細については
決まり次第お知らせします。
と き 5月30日(土)14時~
ところ ふくふくプラザ視聴覚室 福岡県福岡市中央区荒戸3丁目3?39
主催:原発なくそう!九州玄海訴訟福岡地区原告団・弁護団
お問合せ:福岡第一法律事務所 092-721-1211
【再稼働ストップ!各地の集会など】
●5.27福岡九電本店総行動←第2次九電行動は5.25(月)に予定していましたが、
福岡九電本店の要請で、5月27日(水)15時からとなりました。当日は14:00集
合九電本店前で集会を経て、本店に乗り込みます。
3.2九電本店総行動で約10万筆の署名は受け取りを拒否されました。ストップ再
稼働!3.11鹿児島実行委員会は引き続きこの署名を集め、再度5月27日に提出し
ます。
署名の文案は前回と同様ですので、引き続き署名を集めてください。また、5月
25日の総行動にもご参加ください。
署名用紙は玄海訴訟のホームページからダウンロードすることができます→
http://no-genpatsu.main.jp/offer/genpatu_syomei2015mar.pdf
●「玄海フィールドワーク」へのおさそい
玄海町に足を運び、原発を視察し、町の様子を知り、住民の方と懇談するという
のが、今回の企画の内容です。脱原発社会の実現を目指して活動する私たちの、
よい学びの機会になるものと確信いたしております。お申し込みは、電話または
ホームページからお願いします。その際には、氏名、住所、電話番号、希望する
乗合地点をお知らせください。
主催:戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会
連絡先 080-8353-5792(工藤) E-mail:no_war_no_genpatsu_
fukuoka@yahoo.co.jp URL:http://no-war-no-genpatsu-fukuoka.jimdo.com/
1.実施日時 2015年5月31日(日) 8:30~17:00
天神日銀本店前始発 8:30 天神日銀本店前終着17:00
2.乗合地点及び集合時刻 (帰着予定時刻)
・天神日銀本店前集合 8:20 (17:00)
・西新プラリバ前集合 8:40 (16:40)
・筑前前原駅前乗合 9:20 (16:00)
3.参加費用 3500円 (貸切バス利用)
参加費用は、当日、乗合地点でお受け取りいたします。
4.フィールドワークの内容
・玄海町役場 ・玄海原発 ・新たな九電確保地所
・交付金で建てられた建物(町民会館、温泉施設、玄海みらい学園)
・特別養護老人ホーム玄海園 ※玄海町住民の方との座談会(1時間)
5.留意事項
・申し込みが定員(25名)に達しましたら、申し込み受付を終了いたします。
・当日の昼食は各自でご準備ください。
●ストップ再稼働!3万人大集会 in 福岡~川内原発のスイッチは押させない!
~ http://bye-nukes.com/
九州電力は2013年7月8日、川内原発1・2号機の再稼働へ向けた「適合性審査」を
原子力規制委員会に申請し、2014年9月10日、原子力規制委員会は申請書をとり
まとめました。これを受けて、同年11月7日、鹿児島県議会は再稼働推進陳情を
採択し、同日、伊藤祐一郎鹿児島県知事は再稼働受け入れを表明しました。
福島では、未だ12万人の人びとが故郷を奪われたままであり、放射能は放出され
続けています。明らかな人災でありながら責任をとった者は誰ひとりとしていま
せん。川内原発についても、安全上の問題が数多く指摘されていますが、再び誰
も責任をとらない構造は変わらないままです。
今も、鹿児島県、全九州の住民はもとより、大多数の国民は同意していません。
九州電力による川内原発再稼働を目前にして、6月7日、市場最大規模の集会を開
催し、万余の人の波で九州電力福岡本店をとり囲みます。これは、全九州の住民、
全国民が、原発の再稼働を認めないという具体的な意思表示です。
今回の集会は、2011年11月13日に開催された「さよなら原発・福岡1万人集会」
の流れを汲んだ実行委員会が企画しています。
6月7日(日)@福岡市舞鶴公園
11:00~ マルシェオープン
12:30~ アトラクション
13:00~ 集会
14:30~ デモ
【年会費 送金先】
●ゆうちょ銀行間の振込
口座記号番号 01760-6-90732(ゲンカイゲンパツソショウヲササエルカイ)
●他銀行からの振込み
店名 一七九店(179)当座 口座番号 0090732
※支える会の会費は現在、会報の作成・郵送や専従事務局の人件費などに使って
います。
原告の皆さまが原告に加わったときにご負担いただいた印紙代5000円は原告団な
どの活動費はおろか「弁護団活動費」さえ賄うものではありません。このことを
ご勘案くださいまして「支える会」のご支援もよろしくお願いします。
・・・・・・・・・・
「原発なくそう!九州玄海訴訟」原告団・弁護団
URL:http://no-genpatsu.main.jp/
〒840-0825 佐賀市中央本町1-10ニュー寺元ビル3階
佐賀中央法律事務所気付
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