毎日新聞 2015年04月28日 東京朝刊
◇日米防衛協力のための指針(ガイドライン)詳報
<1 防衛協力と指針の目的>
平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和及び安全を確保するため、また、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう、日米両国間の安全保障及び防衛協力は、次の事項を強調する。
・切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応
・日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果
・政府一体となっての同盟としての取り組み
・地域の及び他のパートナー並びに国際機関との協力
・日米同盟のグローバルな性質
日米両政府は、日米同盟を継続的に強化する。各政府は、その国家安全保障政策に基づき、各自の防衛態勢を維持する。日本は、「国家安全保障戦略」及び「防衛計画の大綱」に基づき防衛力を保持する。米国は、引き続き、その核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じ、日本に対して拡大抑止を提供する。米国はまた、引き続き、アジア太平洋地域において即応態勢にある戦力を前方展開するとともに、それらの戦力を迅速に増強する能力を維持する。
日米防衛協力のための指針(以下「指針」という)は、2国間の安全保障及び防衛協力の実効性を向上させるため、日米両国の役割及び任務並びに協力及び調整の在り方についての一般的な大枠及び政策的な方向性を示す。これにより、指針は、平和及び安全を促進し、紛争を抑止し、経済的な繁栄の基盤を確実なものとし、日米同盟の重要性についての国内外の理解を促進する。
<2 基本的な前提及び考え方>
指針並びにその下での行動及び活動は、次の基本的な前提及び考え方に従う。
A 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安全保障条約)及びその関連取り決めに基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは、変更されない。
B 日本及び米国により指針の下で行われる全ての行動及び活動は、紛争の平和的解決及び国家の主権平等に関するものその他の国際連合憲章の規定並びにその他の関連する国際約束を含む国際法に合致するものである。
C 日本及び米国により行われる全ての行動及び活動は、おのおのの憲法及びその時々において適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われる。日本の行動及び活動は、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。
D 指針は、いずれの政府にも立法上、予算上、行政上またはその他の措置をとることを義務付けるものではなく、また、指針は、いずれの政府にも法的権利または義務を生じさせるものではない。しかしながら、2国間協力のための実効的な態勢の構築が指針の目標であることから、日米両政府が、おのおのの判断に従い、このような努力の結果をおのおのの具体的な政策及び措置に適切な形で反映することが期待される。
<3 強化された同盟内の調整>
指針の下での実効的な2国間協力のため、平時から緊急事態まで、日米両政府が緊密な協議並びに政策面及び運用面の的確な調整を行うことが必要となる。
2国間の安全保障及び防衛協力の成功を確かなものとするため、日米両政府は、十分な情報を得て、さまざまなレベルにおいて調整を行うことが必要となる。この目標に向かって、日米両政府は、情報共有を強化し、切れ目のない、実効的な、全ての関係機関を含む政府全体にわたる同盟内の調整を確保するため、あらゆる経路を活用する。この目的のため、日米両政府は、新たな、平時から利用可能な同盟調整メカニズムを設置し、運用面の調整を強化し、共同計画の策定を強化する。
A 同盟調整メカニズム
持続する、及び発生する脅威は、日米両国の平和及び安全に対し深刻かつ即時の影響を与え得る。日米両政府は、日本の平和及び安全に影響を与える状況その他の同盟としての対応を必要とする可能性があるあらゆる状況に切れ目のない形で実効的に対処するため、同盟調整メカニズムを活用する。このメカニズムは、平時から緊急事態までのあらゆる段階において自衛隊及び米軍により実施される活動に関連した政策面及び運用面の調整を強化する。このメカニズムはまた、適時の情報共有並びに共通の情勢認識の構築及び維持に寄与する。日米両政府は、実効的な調整を確保するため、必要な手順及び基盤(施設及び情報通信システムを含む)を確立するとともに、定期的な訓練・演習を実施する。
日米両政府は、同盟調整メカニズムにおける調整の手順及び参加機関の構成の詳細を状況に応じたものとする。この手順の一環として、平時から、連絡窓口に係る情報が共有され及び保持される。
B 強化された運用面の調整
柔軟かつ即応性のある指揮・統制のための強化された2国間の運用面の調整は、日米両国にとって決定的に重要な中核的能力である。この文脈において、日米両政府は、自衛隊と米軍との間の協力を強化するため、運用面の調整機能が併置されることが引き続き重要であることを認識する。
自衛隊及び米軍は、緊密な情報共有を確保し、平時から緊急事態までの調整を円滑にし及び国際的な活動を支援するため、要員の交換を行う。自衛隊及び米軍は、緊密に協力し及び調整しつつ、おのおのの指揮系統を通じて行動する。
C 共同計画の策定
日米両政府は、自衛隊及び米軍による整合のとれた運用を円滑かつ実効的に行うことを確保するため、引き続き、共同計画を策定し及び更新する。日米両政府は、計画の実効性及び柔軟、適時かつ適切な対処能力を確保するため、適切な場合に、運用面及び後方支援面の所要並びにこれを満たす方策をあらかじめ特定することを含め、関連情報を交換する。
日米両政府は、平時において、日本の平和及び安全に関連する緊急事態について、おのおのの政府の関係機関を含む改良された共同計画策定メカニズムを通じ、共同計画の策定を行う。共同計画は、適切な場合に、関係機関からの情報を得つつ策定される。日米安全保障協議委員会は、引き続き、方向性の提示、このメカニズムの下での計画の策定に係る進捗(しんちょく)の確認及び必要に応じた指示の発出について責任を有する。日米安全保障協議委員会は、適切な下部組織により補佐される。
共同計画は、日米両政府双方の計画に適切に反映される。