戦後70年の日米首脳会談である。訪米した安倍首相とオバマ大統領がホワイトハウスで会談し、安全保障、経済の両面で、強い連携をうたいあげた。

両首脳の共同声明では、こんな認識が示されている。

「かつての敵対国が不動の同盟国となり、アジアや世界において共通の利益や普遍的な価値を促進するために協働しており、和解の力を示す模範となっている」

70年前、米国を中心とする連合国との戦争に敗れ、占領された日本。そこから民主主義国として再出発し、憲法9条と日米安保条約を基盤に平和国家を築いてきた。

その延長線上に、日米とアジアの未来を描けるか。まさに、和解の力が針路を定める原点でなければならない。

両首脳が意識しているのは、大国化した中国の存在である。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の18年ぶりの改定は対中戦略の一環だ。

両首脳が合意への決意を示した環太平洋経済連携協定(TPP)も、米国中心の国際秩序にいかに中国を組み込むか、という発想が根底にある。

日米にとって中国は明確な敵ではない。経済の関係を深め、安全保障上の危機を回避するため、知恵を絞って向き合うべき相手である。必要なのは、やはり和解の力に違いない。

今回の訪米で、米側が安倍首相の歴史認識に注目しているのも、そのためだ。米国や中国、韓国と共有できる歴史認識に立って、粘り強く地域の安定をめざすことが日本のリーダーには求められる。

共同会見でオバマ氏は「日本の軍事力の展開にすぐに大きな変化があるとは思わない」と述べた。日米同盟の強化とあわせて「中国との軍同士の協力も強化したい」とも語った。

同盟の目的は、地域の安定であり、中国と敵対することではない。そんな考えが鮮明に表れている。

気がかりなのは、沖縄の普天間問題だ。辺野古以外の選択肢を模索しない両政府の姿勢は、日米安保の効果的な運用を妨げる可能性がある。

首脳会談の開かれた28日は、沖縄にとって「屈辱の日」とされる。52年にサンフランシスコ講和条約で日本が主権を取り戻す一方、沖縄などが米国統治下に残された。首脳会談は沖縄を再び置き去りにする内容だったと言うほかない。

この断絶を放置して同盟強化をうたってもむなしい。ここでも、和解の力が試される。