永岡です、先週行われました、原発国倍兵庫訴訟での重要資料、
(1) 国、東電が過酷事故を予見していたことを示す準備書面概要
(2) 東電が津波を予見していた資料を出せと言う嘱託に関する意見書
これを、お送りいたします。
国と東電は、この訴訟、まだ証人調べはなく、それぞれ一人弁護士を送ってきたらいいのに、合計10数人送りつけて、裁判所、原告に圧力をかけている(=原告にビタ一文払わない)のです。皆様、ぜひお読みいただき、責任を取らない国、東電の問題を知ってください。
(文中は年代を元号で書いてあり(裁判、役所に出す文書は元号が義務付けられている)、これは西暦に直しました)
その他、イベント
7月11日 小出先生が尼崎に来られます。
13時30分~16時30分
サンシビック尼崎(阪神尼崎から徒歩5分)
参加費 前売り1000円、当日1200円
主催、問い合わせ さいなら原発尼崎住民の会
http://sainara-genpatsu.blogspot.jp/
水戸喜代子さんも参加されます。
遺言~原発さえなければ 上映会
7月26日 芦屋ラポルテホール(JR芦屋駅前)
開場11:45、上映12:15~16:15
野田雅也共同監督のお話あり
入場料 一般2000円、高校生以下1500円
問い合わせ 山村サロン
SA読み上げ原稿
1 国や東京電力がシビアアクシデントの発生を予見していたことを主張する準備書面12の概要を説明します。
本書面では、まず前提として、原発の特殊な危険性から万がーにも原発事故は起こってはならず、そのために国や東京電力が最新の知見に基づいて安全対策をすべき高度の注意義務を負っていたことを述べています。そして、国内外で起きた事故やその後の動向を踏まえ、国や東京電力が地震や津波などの外的事象によって全交流電源喪失が起こることを予見していながら、その対策を怠ってきたことを主張しています。
2 まず、国による原発の規制について、2002年当時の原子力安全白書には、「法令に 基づく技術基準は、『安全か否か』の判断基準…であり、最新の知見や技術が反映された合理的なものでなければなりません。」と明記されています。
シビアアクシデント対策について、東京電力はもちろん、国策民営で原発を推進してきた国も、原発の特殊な危険性を管理監督することができる唯一の存在として事業者任せにすることなく、最新の知見に関する情報を積極的に収集し、直ちに安全対策を講じる高度の義務を負っていたと言えます。
3 原発の安全性を確保するための考え方として、1990年代から「深層防護」という安全原則が唱えられ、5層の「深層防護」の原則が国際的な安全原則として確立していました。
「深層防護」とは、原子力施設の事故を防止し、万が一の事故の影響を緩和するために、何重にも安全防護の障壁を備えることをいいます。アメリカやフランスをはじめとする諸外国では、早くから5層の「深層防護」に基づくシビアアクシデント対策が規制化されていきました。日本でも、原発の特殊な危険性を踏まえ、5層の「深層防護」に基づき、常に万がーを想定してシビアアクシデント対策を講じなければならなかったのです。
日本においても、当初は、当時の原子力安全白書において「多重防護」という言葉が用いられ、シビアアクシデント対策の必要性が説かれていました。しかし、この「多重防護」は、海外では十分に考慮されている「深層防護」の4層目や5層目を考慮しておらず、「多重防護」に関する記述すら平成14年を最後に、原子力安全白書からは消え去りました。
4 諸外国をみますと,1979年のスリーマイル島原発事故や1986年のチェルノブイリ原発事故をきっかけに,シビアアクシデント対策が早期に進められてきました。 アメリカでは,1988年に,一定時間の全交流電源喪失に耐えられる設備を求める 「SBO規則」が作られました。
そこでは,すでにハリケーンや竜巻等の外的事象の考慮 が規定されていたのです。平成2年には,「地震・火災に起因する炉心損傷は内的事象に 比べて決して小さくはない」とする報告書が公表されました。また,2002年には, 同時多発テロを受け,航空機衝突を含めたあらゆる要因による大火災や大爆発等の対策まで要求されました。
他方,フランスのルブレイエ原子力発電所での洪水による電源喪失事故,台湾の馬鞍山発電所での全交流電源喪失事故やインドのマドラス原発での海水ポンプ浸水事故などがあり,原発の水への脆弱性も明らかになっていました。
しかし,これらの海外での事故の存在を十分に認識していたにも関わらず,国が外的事象による全交流電源喪失への対策を取ることはありませんでした。
東京電力自身,事故後に公表した「原子力安全改革プラン」において,「日本では長時間の全電源喪失が発生する確率が十分に低いという安全審査指針の考えにとらわれ,同様の事態が自社プラントで生じた際の全電源喪失が発生する可能性について自ら考え直して見るという姿勢が不足していた。」とし,その原因として,追加対策によってコスト負担が増加すること,設置許可の取消や長期運転停止を恐れたことなどをあげています。
5 すでに提出した書面でも述べたとおり、日本では91年までに開かれた共通問題懇談会で外的事象の検討を排除し、それ以降30分以上の全交流電源喪失は考慮しなくともよいとの方針が見直されることはありませんでした。しかし、それ以降も国内において、様々な知見が集積されていたのです。
まず福島第一原発では、大雨や配管の破断によって浸水するトラブルが過去に起こっていました。中でも、91年の溢水事故は、重大な事故でした。この溢水事故は、異物によって損傷した配管が腐食して水が溢れ、1号機のタービン建屋地下1階にあった非常用ディーゼル発電機が浸水したというものです。この事故により約68日間もの間、発電は停止されました。そして、先日公表された「吉田調書」の中で、この溢水事故が極めて重大な事故であったことが指摘されています。吉田所長の発言の一部を引用します。
「前にも実は同じような事象がありまして,91年に1号機でありまして,そのときも,もう水に浸かってしまうと,しばらく使えないというのはよくわかっていたんですね。あのときは海水ですが,それに浸かると,半年ぐらいかかっているんですよ。」
「これは,非常に大変な事故だったと,いまだに思っている。今回の事故よりは全然あれですけれども,日本の事故の中で,一番大きい事故だと,私は思っているんですけれども」
「あの溢水を誰が想定していたんですか。あれで冷却系統はほとんど死んでしまって,DGも水に浸かって,動かなかったんです。あれはものすごく大きいトラブルだといまだに思っているんです。
今回のものを別にすれば,日本のトラブルの1,2を争う危険なトラブルだと思うんですけれども,余りそういう扱いをされていないんですよね。あのときに私はものすごく水の怖さがわかりましたから,例えば,溢水対策だとかは,まだやるところがあるなという感じはしていましたけれども,古いプラントにやるというのは,一回できたものを直すというのは,なかなか。…補修工事をやってきましたけれども,完璧にやっていくのは非常に難しいし,お金もかかるという感覚です。」
この吉田所長の発言に表れているとおり,当該溢水事故によって,原子力発電所の非常用電源設備が極めて水に脆弱であり,重大な危険をはらんでいることを痛感させられていたのです。それにもかかわらず,この教訓が生かされないまま,今回の原発事故時,なおも非常用電源設備や非常用配電盤は溢水によって同時に機能を失う状態にありました。
その後,2003年には,外的事象を前提とするシビアアクシデントを想定し,公衆平均死亡リスクが年百万分の1程度を超えないように抑制すべきという安全目標が提案されました。また,2006年6月までには,外的事象を想定した上で炉心損傷頻度を図る手法も確立していました。2008年には,敷地高を1メートル超える津波が襲来すれば,原子炉の安全停止をするための電動機が機能を喪失することが判明し,外部溢水への対策を取るよう各電力会社に指示しなければ,国の「不作為」を問われる可能性があるとも指摘されていました。
以上のとおり,国と東京電力は,諸外国で外的事象によるシビアアクシデント対策が規制化されていく中で,過去の溢水事故によって非常用電源設備の脆弱性を認識し,外的事象によるシビアアクシデントの危険性に関する国内の知見も進展したことによって,遅くとも2006年ころには,外的事象によって全交流電源喪失が起こり,炉心損傷にいたることを十分に認識していながら,その対策を怠ってきたのです。
以 上
2015年5月21日
文書送付嘱託に関する意見書(東電意見書に対する反論)要旨
1 原告らは前回の期日において,被告東電自身が2008年6月上旬ころまでに実施した,明治三陸沖地震の波源モデルを福島県沖の海溝沿いに持ってきた場合の津波水位の試算に関する資料など,4つの津波水位に関する文書の送付嘱託を申し立てました。
これに対し被告東電からは,これらの文書を提出する必要はないという意見書が出されました。原告らは,今回の期日でこの被告東電の意見書に対する反論の書面を提出しましたので,今からこの書面の要旨について簡潔に述べます。
2 被告東電は,被告東電自身が計算した津波シミュレーション結果に関する文書を提出する必要がない理由として,被告東電との関係でこれらの文書に必要性や関連性がないと主張しています。
しかし,本件において原告らは,被告東電には今回の事故で起きたような全交流電源喪失に至る程度の津波が発生することを予見していた,もしくは少なくとも予見することができた,にもかかわらず,被告東電は本件事故に至るまで事故を回避する有効な手だてをなんら講じなかった,それゆえ被告東電には原告らに発生した損害を賠償する責任があるのだという主張をしています。
このように,被告東電の責任を論じるにあたって当然必要になる津波の予見可能性を検討するにあたり,他ならぬ被告東電自身が計算していたシミュレーション結果に関する文書を取り調べる必要性があることは明らかです。
3 また,被告東電は,原告らが要求する文書について,その特定がなされていないとも主張しています。
しかし,被告東電は,自身が本件事故後に発表した事故調査報告書の中で,津波シミュレーション計算をしたことや,その結果について言及しています。原告らは,これを受けて,この被告東電自身が行ったというシミュレーションに関する文書を提出してほしいと言っているのです。被告東電が,自ら行ったことを表明しているシミュレーションに関する文書を特定できないはずはありません。
4 被告東電は,今述べました事故後の事故調査報告書において,次のようなことを表明しています。
「原子力災害が発生した場合においては,その状況を迅速・正確に,分かりやすく公開し,広く社会の皆さまにご説明することは,原子力発電所を運営する事業者として当然の責務である。今後,トップ自らが率先し,積極的な|貴報発信に努めていく」
「何より,原子力災害において,核物質防護に関することを除き,あらゆる情報を公開することは会社としての基本姿勢であり,今後もいささかも変わるところではない」
「当社事業に関するリスクについて,これまで以上に迅速かつ適切に情報開示を行い,説明責任を果たすとともに,様々なステークホルダーとのコミュニケーションの活性化を図り,信頼の回復に努める」
このように述べています。
この裁判において,津波シミュレーション結果の文書を提出しないという被告東電の態度は,今述べた被告東電自身の言葉と完全に矛盾するものです。被告東電には,今読み上げた言葉をもうー度自身でよくかみしめ,本件事故を引き起こした当事者としての責任ある行動をとるよう強く求めます。