2015年6月29日05時00分
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安倍晋三首相に近い自民党議員でつくる勉強会で、沖縄の地元紙を含む報道機関を威圧する発言が出ていた問題をめぐり、自民党執行部は勉強会の代表者らを処分したことで早期の幕引きを図る。ただ、党内では「恐怖政治だ」との不満がくすぶり始めたほか、野党も国会で引き続き追及する方針。余波は今後も続きそうだ。
「軽率な議論で自民党の姿勢に誤解を与えた。まことにけしからん事件だ。申し訳なかった」
自民党の谷垣禎一幹事長は28日のNHK番組で、25日の「文化芸術懇話会」に出席した議員が「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」と発言したり、講師に招かれた作家の百田尚樹氏が「沖縄の二つの新聞社は絶対につぶさなあかん」などと述べたりしたことについて陳謝した。
自民党は27日、懇話会代表の木原稔・党青年局長を1年の役職停止に、問題発言をした議員3人を厳重注意とした。
党内には、勉強会の発言について「面白かった」と賛同する声がある一方、閣僚経験者の一人は「同じ自民党として恥ずかしい」と批判する。さらに、党内で主立った政権批判は出ていないものの、安倍首相(党総裁)や谷垣氏らの判断で代表者更迭などとした対応には不満の声が上がりはじめた。
ある派閥領袖(りょうしゅう)の一人は党幹部に「木原氏が発言したわけでも、発言を促したわけでもない」と抗議。首相に近いベテラン議員も「処分すると責任を認めたことになる。一気呵成(いっきかせい)に更迭するのは問題だ」と話す。
また、党執行部は問題発言に過敏になり、若手議員の番組出演にまで締め付けを強める。27日未明放送のテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ!」では、出演を決めていた複数の議員を呼び出し、出ないよう指示。議員は「日程の調整がつかない」という理由で出演をとりやめた。これに対し、党三役経験者は「圧力だ」と批判。閣僚経験者の一人は「恐怖政治だ」と指摘する。
野党は攻勢を強める。28日のNHK番組で、民主党の福山哲郎幹事長代理が「トカゲのしっぽ切りではまったく収まらない」と批判。民主は勉強会の発言内容に関して謝罪を拒む安倍首相を追及する方針だ。(笹川翔平)