社説:アフガン戦争 米は「責任ある幕引き」を

毎日新聞 2015年10月17日 東京朝刊

 先行き不安を禁じえない方針転換である。オバマ米大統領は2016年内に撤退させるはずだったアフガニスタン駐留米軍について、17年以降もほぼ半分の規模(5500人)で駐留させると発表した。同年1月に退任するオバマ大統領は、任期中にアフガン戦争を終わらせることを事実上断念したわけだ。

ブッシュ前政権が01年10月にアフガン攻撃を始めてから丸14年。米国史上最長という戦争は、旧支配勢力タリバンの攻勢が目立ち、米国の勝利はおろか、痛み分けの停戦の見通しも立っていない。

国連安保理決議に基づく国際治安支援部隊(ISAF)は昨年末で任務を終了し、一時10万人規模だった駐留米軍も原則的に戦闘任務を終えて1万人弱がアフガン軍の訓練に当たる。この態勢でタリバンの猛攻をしのげるか。米軍は17年以降、主に首都カブールや主要都市に駐留する方針だが、アフガン軍の育成を急がないと戦況はさらに悪化しそうだ。

思い出すのは、1979年にアフガンに侵攻したソ連軍が10年後に撤退した後、タリバンが台頭して首都を制圧したことだ。米軍の方針転換や規模縮小はソ連軍の撤退同様、タリバンを勢いづかせる。この国は結局、アフガン攻撃より前の状態に戻るのではないかという不安がある。

過激派組織「イスラム国」(IS)の動向も気になる。アフガンに浸透するISがタリバンと手を組むにせよ対立するにせよ、イラクやシリアからアフガンに至る地域で過激派の力が強まり、「無法地帯」が広がることも予想されるからだ。

まさに正念場である。オバマ大統領は昨年、アフガン帰還兵を前に「米国は責任を持って戦争の幕を引く」と宣言した。アフガンとイラクでの戦争終結はオバマ政権の大きな課題だったが、イラクからの撤退が早すぎてISの台頭を許したとの批判もある。アフガン情勢への対応を誤れば、オバマ大統領はレガシー(政治的功績)どころか大きな負の遺産を残すことになろう。

紛争疲れが人命軽視を生んでいる疑いもある。米軍は今月初め、「国境なき医師団」が運営するアフガン北部の病院を爆撃し、多くの犠牲者を出した。誤爆としてオバマ大統領が謝罪したが、地上のアフガン部隊などと十分に情報を交換していれば悲劇は避けられたのではないか。

米・アフガンの意思疎通の問題に加え、アフガン国内では大統領と行政長官の双頭体制が治安上の連携を損ねているとの指摘もある。態勢立て直しにはオバマ大統領の指導力が不可欠だが、独り立ちに向けたアフガン政府の意志と努力が問われているのは言うまでもない。

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