環太平洋連携協定(TPP)の「大筋合意」に関して、日本がTPP対象から除外し
ている医療機器の規制についてTPPと同程度の水準を維持し、将来の薬価制度につい
て協議することを、日米間の合意文書で確認していることが19日までに明らかになり
ました。
政府は「(医療分野などで)国内制度を一つも変えることはない」(甘利明担当相
)と説明しますが、日本の医療保険を脅かす危険な火種となるものです。
問題の文書は、医薬品・医療機器に関する協定付属書の適用について合意したもの。
そこでは、日米が「医療機器の世界最大級の市場であり、かつ輸出者である」として
、医療機器について「(付属書との)適合性の水準を維持する」と明記。TPPより厳
しい規制などは認めない考えを打ち出しています。
また、「付属書に関するあらゆる事項(関連する将来の保健制度を含む)について協
議する用意があることを確認」として、付属書に盛り込まれた「医薬品の償還価格(日
本では薬価)」の決定ルールについて協議を行うことを確認しています。
高薬価求める米国
これまでも米国は、高薬価を保障する「新薬創出加算」の維持をはじめ、外国薬価が
高くても日本の薬価が高くならないようにする「外国価格調整制度」や、売り上げが増
えた場合に薬価を引き下げる「市場拡大再算定制度」の見直しを求めてきました。
米豪FTA(自由貿易協定)に基づく協議で米国の要求を受け入れたオーストラリア
では、医薬品が急騰し、医療財政に悪影響を与えました。TPPの「大筋合意」で日本
でも同じような事態が生まれかねません。
国会で「米国要求を受け入れれば、薬が高く、治療を受けられない患者が出てくるの
ではないか」(日本共産党の田村智子議員、2013年3月21日参院厚労委)との指
摘に対して、政府側は「向こうの言うとおりでなければTPPを結べないということで
はない。交渉でしっかり主張する」(田村憲久厚労相・当時)と答えていました。しか
し、「大筋合意」は、米国の要求通りになっていることを示しています。
業界の利益確保
TPP「大筋合意」では医薬品の知的財産権の強化を主張する米国の要求を受けて、
データ保護期間の下限などが盛り込まれました。
医薬品・医療機器付属書では、「償還価格」(薬価)設定に対し、医薬品メーカーの
異議申し立てを認めることを義務づけています。
これによって安価な後発薬の開発の遅れや、医薬品などの価格上昇につながるなど、
日本の薬価制度がいっそう脅かされる危険が示されています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-11-20/2015112002_02_1.html
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