毎日新聞 2015年11月25日 15時09分(最終更新 11月25日 20時56分)

選挙区間の「1票の格差」が最大2.13倍だった2014年12月の衆院選は憲法が定める投票価値の平等原則に反するとして、二つの弁護士グループが選挙無効を訴えた17件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は25日、「小選挙区の区割りは不平等状態にある」と指摘し、「違憲状態」とする統一判断を示した。一方で国会の取り組みを一定程度評価し、憲法上許される期間内に格差が是正されなかったとはいえないとして無効請求は棄却した。衆院選の格差訴訟での違憲状態判決は3回連続。
最高裁は参院選でも直近の2度の選挙を「違憲状態」と判断しており、司法が衆参両院に選挙制度の抜本見直しを迫る状態が続くことになる。
大法廷は11年、格差が最大2.30倍だった09年衆院選を「違憲状態」と指摘、格差の要因は各都道府県に1議席をあらかじめ配分する「1人別枠方式」にあるとして廃止を求めた。国会は12年の衆院解散直前、別枠方式の規定を削除し、小選挙区定数を「0増5減」する法改正を行った。しかし区割りは間に合わずに12年選挙の最大格差は2.43倍に拡大。13年の判決で再び「違憲状態」との判断が示された。0増5減が反映された14年選挙では格差がわずかに縮小しており、国会の取り組みをどう評価するかが焦点となった。
この日の判決で大法廷は14年選挙の区割りについて「0増5減の対象外の都道府県では定数の見直しがされていない」と指摘。格差が2倍を超える選挙区が13に上った点も踏まえ、「1人別枠方式廃止の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現しておらず、区割りは投票価値の平等に反する状態にあった」と述べた。
一方で、区割り見直しの時点で最大格差が2倍を切った点などを「一定の前進」と評価。衆院議長の諮問機関「衆院選挙制度に関する調査会」が14年選挙後も制度改革の議論を続けていることも踏まえ、「段階的に是正を図ることは現実的な選択として許される」とし、見直しに必要と認められる期間(合理的期間)は過ぎていないと判断した。国会には「格差のさらなる縮小を可能にする検討と集約を着実に続けていく必要がある」と注文を付けた。
裁判官14人のうち9人の多数意見。桜井龍子裁判官ら2人は「合憲」の意見を、大橋正春裁判官ら3人は「違憲」との反対意見を述べ、反対のうち2人は選挙は無効と指摘した。0増5減の法改正時に内閣法制局長官だった山本庸幸裁判官は審理から外れた。【山本将克】
◇判決骨子
・2014年衆院選の小選挙区の区割りは「0増5減」対象外の都道府県で定数が見直されておらず、12年選挙と同様に投票価値の平等に反する状態にあった。
・合理的期間内に是正がされなかったとはいえない。
・国会でさらなる格差縮小を可能にする具体的な改正案の検討と集約が早急に進められる必要がある。
◇違憲状態
「1票の格差」を巡る訴訟で、最高裁は(1)法の下の平等を定める憲法に照らして投票価値に著しい不平等が生じているか(2)不平等を是正するために必要と認められる合理的期間を経過しているか−−の2段階で違憲性を判断してきた。格差が著しく不平等な状態が「違憲状態」で、さらに憲法が許容する期間内に是正されていないと判断すれば「違憲」となる。