毎日新聞 2015年11月27日 23時32分
安倍晋三首相が重点政策と位置づける「1億総活躍社会の実現」に対し与党や地方から厳しい声が上がっている。自民党の1億総活躍推進本部では27日、政府の緊急対策に対して「全体のつながりが見えない」などの批判が続出。同日の全国知事会議でも、1億総活躍が打ち出されたことで「地方創生」が後退しているのではないかとの声が相次いだ。
「ひどい中身だ。『実現できていない』と国民や野党にたたかれて、(来年の参院)選挙に突入していいのか」。木村義雄元副厚生労働相は自民党本部で開かれた推進本部で、加藤勝信1億総活躍担当相に不満をぶちまけた。直前の党総務会でもやり玉に挙がり、参院幹部は「総花的で何をどうしたいのか分からない」とため息をついた。
党側が問題視するのは、子育て支援や介護の充実を打ち出したものの、財源が示されず、各府省の連携も不足しているとみられる点だ。わざわざ1億総活躍を掲げて期待に応えられなかった場合を懸念する声に対し、加藤氏は「来春に向けてしっかりと(正式なプランを)とりまとめていく」と繰り返した。
一方、全国知事会は27日、「地方創生なくして1億総活躍社会の実現はない」との緊急決議を採択した。政権を挙げて1億総活躍に注力する中、昨年の看板政策だった「地方創生」がおざなりになりかねないとの懸念が知事会側にはある。1億総活躍で大都市での介護や保育の拡充が進めば、地方の人材不足が強まるとの危機感もある。
首相官邸での全国知事会議でも、「地方創生が見えにくくなっている」という指摘に、首相は「地方創生を政策の柱として推進していくことは揺るぎない」と答えた。【青木純、加藤明子】