大増税よりも恐ろしい? マイナンバー制度の威力

マイナンバーの通知カード(見本)

マイナンバーの通知カード(見本)

マイナンバー制度開始の衝撃(1)

10月23日から一部の自治体でマイナンバーの通知カードの配達が始まりました。通知カードの配達を担う日本郵便によると、全国約5200万世帯のほぼ全てに対し、簡易書留で郵便物を配るようなことは前例がないとのことです。大都市では郵便局の準備に時間がかかり、全世帯への配達は11月末ごろまでかかる見通しといわれています。

いずれにせよ、マイナンバー制度は戦後最大の社会制度改革であり、全国を結ぶ壮大な情報ハイウエーが構築されます。来年1月から運用が始まり、徐々に適用の範囲を拡大していくマイナンバー制度について、通知カードがみなさんの手元に届く今のタイミングで、その概要を3回に分けてお伝えします。メリット・デメリットだけでなく、国の意図や注意点、私たちはどのようにマイナンバーと付き合えばよいのか、などについて考えるきっかけにしてもらえればと思います。

マイナンバーは徴税の「切り札」に

マイナンバーとは、生まれたばかりの赤ん坊からお年寄りまで、全ての国民に割り振られる12ケタの「背番号」です。この番号は、個人の所得、健康保険、雇用保険などの社会保障に関する情報とひも付けられます。

政府は「納税、年金などの行政手続きが簡素化される」と喧伝(けんでん)しています。確かに社会保障などの手続きが一つの番号で行えるようになれば、今よりはるかに便利になるでしょう。しかし、それと引き換えに私たち国民が失うものは計りしれないと筆者は考えます。

マイナンバー制度は、税の徴収の「切り札」となるからです。マイナンバー制度の開始は、国税庁と財務省の長年の悲願達成とも言われています。今後の日本では、所得税や相続税、消費税の増税よりも、もっと大ごとであり、恐ろしいことが待っていると言っても過言ではないでしょう。

マイナンバーの通知カードを配達し、印鑑をもらう郵便局員(右)=北九州市小倉北区で2015年11月6日、比嘉洋撮影
マイナンバーの通知カードを配達し、印鑑をもらう郵便局員(右)=北九州市小倉北区で2015年11月6日、比嘉洋撮影

 なぜ、筆者がマイナンバー制度の開始が恐ろしいと考えるのか、その理由を説明しましょう。

資産、所得の情報が国に簡単に把握される

それは、私たちのお金に関するほぼ全ての情報が順次、国家を運営する官僚機構に握られることになるからです。

国が、国税局を中心にマイナンバー制度の導入に取り組んだ理由は明快です。税金が入らなければ、国家が成り立たないからです。「国家権力とは何か」を突き詰めていけば、「徴税権」と「警察権」になりますが、より重要な方といえば、徴税権が残ります。しかし徴税権を駆使するには、国民が持つ資産、所得の正確な情報が必要になります。

マイナンバー制度のスタートは、国税庁と財務省の長年の悲願とも言われている=東京・霞が関の国税庁前で2015年5月3日、川村彰撮影
マイナンバー制度のスタートは、国税庁と財務省の長年の悲願とも言われている=東京・霞が関の国税庁前で2015年5月3日、川村彰撮影

 この情報収集が、マイナンバー制度が導入されることでいとも簡単にできるようになります。従来より、国税庁はKSK(国税総合管理)システムを導入しています。全国524の税務署が全てコンピューターネットワークで結ばれるKSKシステムには、全国の法人や個人の資産、所得に関する情報が蓄積されています。現在の申告と納税は基本、e‐tax(国税電子申告・納税システム)によっていますが、マイナンバーが導入されれば、資産や所得に関する情報に加え、社会保障などの情報も一括管理できるようになります。

つまり、マイナンバー制度の本質は、国民一人ひとりの所得把握の精度向上です。課税当局は「12ケタの番号」を用いて、所得や資産状況を効率的に名寄せし、突合(とつごう)することが可能になるのです。まさにマイナンバー制度は、徴収側にとって「鬼に金棒」と言えるでしょう。

合法的に適正申告するために「生きた税金の知恵」を

私たちの未来は、イギリスの作家ジョージ・オーウェルが小説「1984年」で描いた、国民を完全な監視下に置く世界が待っているのかもしれません。

マイナンバー制度が始まれば、私たちの暮らしはガラス張りになります。極論すれば、人生をうそ偽りなく正直に生きなければならなくなると言えます。「納税は国民の義務」ですから、あなただけが課税をうまく逃れるという方法はありません。不正は徹底的に排除されるでしょう。

筆者は、遊びや息抜き、曖昧さなどの人生を色づけて豊かにするものの価値が失われてしまうのではないかと危惧しています。

国が徴税権を強化する姿勢を見せる中、その流れにあらがわずに受け身のまま税金と付き合うのは、望ましくありません。正々堂々と合法的に適正申告すべきです。かしこく税金と付き合うためにも、生きた税金の知恵を身につけましょう。

日本人として、日本国で安心して暮らしていくには、与えられた環境の中で税金に対して最善を尽くす姿勢が大切なのです。

<2016年1月から運用開始のマイナンバー制度ですが、それは始まりに過ぎません。次回「マイナンバー制度開始の衝撃(2)」は、どのようなステップを経て本格的に導入されるようになるのかをまとめます。11月18日に掲載します>

(2)マイナンバー「預金とひも付け」で資産は丸裸

(3)マイナンバー導入 資産防衛のこれが切り札

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岩佐孝彦

岩佐孝彦

税理士

1969年、兵庫県生まれ。金融資産1億円以上・年収2000万円以上の経営者をはじめ、百年企業の3代目社長、創建600年以上の寺院住職など富裕層がクライアントの8割以上を占める。サラリーマン大家さんのキャッシュフロー改善のコンサルティングも手掛ける。最新刊は、「ずっとお金持ちの人 成金で終わる人」(日本実業出版社)。

 

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