最後の一般教書演説 オバマ氏7年、変革と妥協 公約達成45%、議会の壁に阻まれ

 オバマ米大統領は12日、米議会で任期最後の一般教書演説を行った。リーマン・ショックにあえぐ中で変革を掲げて誕生したオバマ政権はこの7年、イラク戦争終結や医療保険制度改革(オバマケア)など多くの公約を達成した。だが、議会の壁に阻まれ、妥協の結果として骨抜きになった政策も多い。残り1年。総仕上げとする具体的な政策を示さない一方、焦点を未来に据え、11月の大統領選で3期連続の民主党政権実現に向けた布石を打つ狙いが透けてみえた。【ワシントン及川正也、西田進一郎】

 「米国は世界最強の国家だ。桁違いに。だれも攻撃しようとしないのは破滅するとわかっているからだ」

 12日のオバマ演説で与野党から喝采を博したハイライトの場面だった。だが、いったんはイラク駐留米軍撤退という最大の公約を果たしながら、過激派組織「イスラム国」(IS)の増勢を許し、2014年に再度イラクへの軍事介入を余儀なくされた。ツイッターでは「大統領は現実的でなく脇が甘い」など批判的な意見があふれた。

 オバマ政権の公約500超の達成度評価で定評がある南部フロリダ州の地方紙タンパベイ・タイムズのウェブサイト「ポリティファクト」によると、公約達成は45%と半分以下に過ぎない。修正・妥協のうえ実施した政策25%を含めると7割に達するが、公約違反や断念した政策も22%ある。

 国民に原則加入を義務付けた医療保険制度改革法の成立は最大の目玉となった。長年の懸案だったイラン核問題、キューバとの国交回復、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)など歴史的合意を相次いで実現し、変革と呼べる成果を達成した。

 しかし、公約通りの実現が少なく、妥協せざるを得ない背景には、野党・共和党が多数派を占める議会の壁がある。

 不法移民に市民権取得への道を開く抜本的な移民制度改革は共和党の反発で挫折。不法移民の子供を保護し一定の滞在許可を与える限定策を大統領権限で実施した。TPP合意やキューバ国交正常化も完全実施には議会承認が必要で、オバマ大統領は議会に協力を求めたが、実現の道筋は描けていない。

 戦後、3選禁止の憲法修正以降、2期務めた大統領はオバマ氏を含め5人いるが、いずれも任期最後は野党が議会多数派を占め、議会の壁と苦闘した。このため、独自判断で展開できる外交で突破口を開こうとしてきたが、容易ではない。

 初の黒人大統領として就任した09年にノーベル平和賞を受賞するなど華麗なスタートを切ったオバマ大統領。テロとの戦いを終結させ、ロシアと「核兵器なき世界」を主導する−−。7年前に描いたオバマ政権の野心的な構想は、ISの増勢、イラン接近に伴うサウジアラビアやイスラエルなど中東同盟国の離反、中国の台頭、ロシアの復活を許すに至って崩れ去った。

 オバマ大統領は演説でイスラム過激派対策を重視する姿勢を示したが、新たな外交課題は挙げなかった。世界中に脅威が拡散し、国際政治は混迷を極める。「成果を残そうと、歴代大統領と同様に安易に北朝鮮との妥協路線に走るおそれもある」(日米外交当局者)との臆測も出ている。

 残る1年の任期でできることは限られている。オバマ大統領は、アフガニスタンからの米軍撤退などは諦め、TPPの協定発効に向けた議会承認などに力を入れるとみられる。アジア太平洋地域への「リバランス(再均衡)政策」の核となるからだ。発効にめどがつけばこれも大きなレガシー(政治的遺産)になる。

 大統領のもう一つの目標は銃規制強化の実現だ。大統領は今回、議事堂内の貴賓席の一つを銃の犠牲者のための席として空席にした。銃購入者の身元調査の拡大、強化を打ち出すが、野放しとなっているインターネットでの売買にどれだけ網をかぶせることができるのか実効性は不透明だ。

大統領選 民主勝利へ布石

 オバマ大統領は12日の演説で、7年間の実績を強調する一方、国内でわき上がる移民や難民、イスラム教徒への排外主義的な発言を「間違っている」と糾弾するなど、11月の大統領選を意識して野党・共和党を激しくけん制した。自らのレガシーは大統領選で共和党候補が勝てば覆されかねず、その保全のためには民主党の続投が必須だからだ。

 「人種や宗教で区別するいかなる政治も拒否する必要がある」。大統領は共和党の候補者指名争いで支持率首位を走るドナルド・トランプ氏(69)がメキシコ移民を「麻薬や犯罪を持ち込む。強姦(ごうかん)犯だ」と侮辱し、イスラム教徒の一時入国禁止を訴えていることを念頭に批判。IS掃討作戦で「じゅうたん爆撃」を主張しているテッド・クルーズ上院議員(45)についても、テロや紛争などへの米国の対処は「強気の発言や市民へのじゅうたん爆撃」を超えるものが必要だと切り捨てた。

 大統領は2010年に下院の過半数を共和党に奪われて以降、議会の承認を必要としない大統領権限の範囲内でやりたい改革を実行してきた。

 大統領権限には法的な担保はないことから、次の大統領が逆に覆すこともできる。共和党は、キューバとの国交正常化やイラン核問題の最終合意にも反発している。共和党の大統領になれば、看板政策のオバマケアも危うい。共和党はオバマケアを目の敵にして、廃止法案を上下両院で可決してきた。これまでは大統領が拒否権を行使してきたが、共和党の大統領になれば廃止は現実味を帯びる。共和党候補批判の背景には危機感がにじむ。

 これに対し、大統領の成果は後継を狙う民主党候補にとっては追い風になる。同党最有力候補のヒラリー・クリントン前国務長官(68)は演説について、「(オバマ氏の)業績を基としてさらに前進しよう」とツイッターに大統領との写真付きで書き込んだ。一方、批判を受けた形のトランプ氏は「演説は私が長い間聞いてきたものの中で、最もつまらず、散漫で、中身のないものの一つだった」とツイッターで酷評した。

Categories オバマ

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